丸井がクレジットカードの即時発行にこだわる歴史的な理由ポーター賞企業に学ぶ、ライバルに差をつける競争戦略(3/6 ページ)

» 2017年11月27日 06時00分 公開
[伏見学ITmedia]

大薗: 傷つく人がいるかもしれないですね(笑)。

青井: 買物でご利用いただいていれば、限度額はどんどん上がっていきます。2年経たないうちにゴールドカード会員になる人もいます。現在、プラチナあるいはゴールドカード保有者は全会員の25%で、取り扱い高は6割に上ります。彼らの1人当たりの利用額は一般カード利用時の約3倍です。

 ほかのクレジットカードであれば、若い人はそもそもカードを発行してもらえません。けれども、若い人は信用がないわけではなく、今はまだお金がないというだけ。将来頑張れば稼げるようになるのです。丸井はそういう考え方です。一緒に信用を作って成長していくというモデルは、世界のクレジットカード会社の中でもわれわれだけではないでしょうか。

丸井が発行する「エポスカード」 丸井が発行する「エポスカード」(出典:同社サイト)

 創業者の考え方が、実際の与信のプロセスや、顧客との関係の中で綿々と生きています。カードのシステムは当初はハウスカードでしたが、今はVISAと提携してインターナショナルカードになりました。システムは変わりましたが、考え方は受け継がれています。

 よくいろいろな方から「丸井にはお世話になった」と言われます。世話になるというのが面白いなと思います。1つエピソードを紹介しましょう。今では成功しているある料理人の方が若いころ東京に出てきたとき、奮発してスーツを買おうと思いました。ただ、一括では払えないので百貨店などでは相手にされなかったのに、丸井は自分のことを信用して、スーツを月賦払いで売ってくれたというのです。それが嬉しくて、深く心に残っているとおっしゃっていました。

 たとえ現在は利用してなくても、丸井には世話になったという感情が多くの人にあるようです。これは無形の財産だと思います。

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