シャアVS.ダース・ベイダー 上司にするにはどちらがいい? 激動時代におけるリーダーの条件『最後のジェダイ』公開記念(4/4 ページ)

» 2017年12月22日 11時51分 公開
[ITmedia]
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優れた作品は時代を“読む”

 冷戦終結後、欧米の安全保障の担当者たちは、これからの「危機の形」を模索していた。その結果、今後は「非国家組織による奇襲的な攻撃『非対称の戦い』が、重大な危機として浮上してくる」と予測し、そしてその予測は実現してしまった。宇宙世紀の歴史はこうした現実を、はるかに先取りしていたと感じます。

 一方、「光と闇の争い」という背景を持つサーガ「スター・ウォーズ」は、「よりファンタジー的な、善悪二元論の物語」という見方もできますが、案外そうとも言い切れない。エピソード3『シスの復讐』で、元老院の最高議長パルパティーン(後の銀河皇帝)は「ジェダイもシスも、ほとんと違いはない」と発言していますが、確かに、彼の「秩序が真の平和をもたらす」という思想も、悪とは言い切れないのです。もし帝国の統治が続いていれば、銀河辺境でも安心して暮らすことができる「パックス ギャラクティカ」が実現していたのかもしれません。

 欧州連合(EU)では、穏健派のリーダーが政権基盤を揺さぶられ、世界的に強権的なリーダーが台頭。しかもそれに熱狂する人たちもいる。帝国の成立がファースト・オーダーのような強烈な支持者を生んだように、その熱狂も複雑な世界の中で一理はある。「遠い昔、はるか彼方の銀河」の物語もまた、現代において新たな価値を感じさせています。

 こうした状況は、なにも製作者たちが「小難しいことを考えていた」というわけではなく、その時代時代において「新しいもの、古びないもの」を一生懸命追求した結果だったのでしょう。そして実際につくられた作品は、世代を越えて長い寿命を持ちました。

 かつてビジネス誌では「信長に学ぶリーダーシップ」など、そういった企画がしばしば表紙を飾り、筆者などはてっきり「歴史雑誌か」と誤解していたものです。では現代ならば「ラオウ、銀河皇帝に学ぶ、恐怖支配による社内規律の確立」といった企画があってもいいのではないでしょうか。もっとも、超絶ブラック企業になってしまうかもしれませんが。

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堀田純司 1969年、大阪生まれ。作家。主な著書に「僕とツンデレとハイデガー」「オッサンフォー」(講談社)、「メジャーを生み出す マーケティングを超えるクリエーター」(KADOKAWA)、編著に「ガンダムUC証言集」(KADOKAWA)などがある。日本漫画家協会員。Twitter @h_tajep8は、期せずしてセカイ系化していたのが、興味深かったです。


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