プリンターがあるのに、なぜ「活版印刷機」が人気なのか水曜インタビュー劇場(開発公演)(1/6 ページ)

» 2018年02月07日 07時30分 公開
[土肥義則ITmedia]

 学研プラスの科学系ムック『大人の科学マガジン』が売れている。最新刊の付録は「小さな活版印刷機」(3500円、税別)。発売前からSNSなどで話題になり、「これで名刺をつくりたい」「欲しい! 早く組み立てたい!」といったコメントが相次いだ。発売後、初版の2万部はすぐに消える。「編集部にも在庫がなかった」というほど、売れに売れているのだ。

 活版印刷とは、文字の部分を凹凸にした活字に、インキを塗り、紙を押し付けて印刷すること。PCのプリンターを使い慣れている人にとっては「だからなに? それのなにが魅力なの?」と思われたかもしれないが、機会があればぜひ一度試していただきたい。あらかじめセットしていれば、あとはハンドルを動かすだけ。インキが付いたローラーが動いて、どんどん印刷することができるのだ。記者も試したところ、思わず「おお!」と大声を出してしまうほど、その動きはスタンプ押し機のような感じで、とにかく楽しいのだ。

 19世紀の半ばに実際に使われていた「手フート印刷機」をモデルにした小さな活版印刷機は、どのようにして再現したのか。本物のサイズはかなり大きいのに、付録は手のひらサイズである。本物の活字は金属でできているのに、付録はプラスチックである。サイズや素材などが違うのに、同じように働いてくれるのである。

 通常、試作品は1カ月ほどでできるそうだが、小さな活版印刷機の場合、3カ月ほどかかった。その後も試行錯誤が続き、なんとか完成することができたという。21世紀に生まれたアナログ印刷機の舞台裏について、統括編集長の吉野敏弘さんに聞いた。聞き手は、ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則。

『大人の科学マガジン 小さな活版印刷」が売れている
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