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コンビニオーナー残酷物語 働き方改革のカギは「京都」にあり24時間営業は止められる(3/5 ページ)

» 2018年07月02日 08時30分 公開
[北健一ITmedia]

限りなく労働者的な「経営者」

 宮崎県で大手コンビニチェーンのフランチャイズ店オーナーをしているTさんは、父からコンビニ経営を引き継いだ。父が母とコンビニを始めたのは1996年のこと。ところが半年後、父は脳溢血で急死する。ほとんど寝ずに店を切り盛りした過労が父の命を縮めたと、Tさんは思っている。

 雇われ店長なら、過労で亡くなれば過労死と認定され労災保険から補償がなされる。だがオーナー店長は、どんなに働いていても契約上は「経営者」。「労働者ではない」から過労死にもカウントされず、労災保険の対象にもならない。

phot 労働契約法では、事業者が労働者の健康を確保しなければならないという規定があるものの、コンビニオーナーは「経営者」であるため「労働者」ではない(厚生労働省「過労死等防止啓発パンフレット」より)

 冒頭でふれたファミレスや牛丼チェーンとコンビニには、1つの違いがある。24時間をやめたファミレスや牛丼チェーンの多くが直営店なのに対し、コンビニは大半がフランチャイズだということだ。

 時間別収支を出すと、「深夜の時間帯」は赤字のお店が多いとみられる。来客が少ないのにスタッフの時給は上がるからだ。午後10時から午前5時まではそれ以外の時間の25%増しで、基本給が最低賃金に近くても、多くの地域で1000円にはなる。お店が直営なら、深夜の赤字は本部が被る。ところがフランチャイズでは、深夜が赤字でもそれを被るのは加盟店だ。深夜でも売り上げが上がる限り粗利が発生し、粗利分配方式を採るコンビニ・フランチャイズでは、深夜の粗利の半分以上を本部が吸い上げていく。いわば、本部と加盟店とで「損益分岐点売上高」が違うことが、コンビニ本部が24時間営業をやめようとしない一因と考える関係者は少なくない。

 それに対しコンビニ本部は、「一部の店だけ24時間をやめるとお客さまが混乱する」とか、「数時間でも営業を止めれば、その前後も品薄になってトータルの売上が下がってしまう」「深夜は、納品受け入れや清掃に向いている」と24時間営業の利点を強調してきた。

 実際はどうか。

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