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» 2018年07月17日 06時30分 公開

池田直渡「週刊モータージャーナル」:世界が知らない“最強トヨタ”の秘密 友山副社長に聞く生産性改革 (1/5)

トヨタがレース活動を通じて働き方改革を推進する理由。トヨタGRカンパニーのプレジデントである友山茂樹副社長へのインタビュー取材によって、なぜそんな大胆な改革が可能なのかを究明した。

[池田直渡,ITmedia]

 トヨタ自動車がレース活動を通じて「働き方改革」を推進していることは、前回と前々回の記事でお伝えした。

 今回はもっと踏み込んだ形で、その狙いや本質的な部分を明らかにし、なぜそんな大胆な改革が可能なのかを究明すべく、トヨタGRカンパニーのプレジデントである友山茂樹副社長のインタビューをお届けする。

トヨタGRカンパニーのプレジデントである友山茂樹副社長(撮影:小池義弘) トヨタGRカンパニーのプレジデントである友山茂樹副社長(撮影:小池義弘)

不可能を可能にするという経験

池田: トヨタは今、ニュルブルクリンクをはじめとするレースを活用して生産性改革を進めていますよね。今年のニュルブルクリンク24時間レースへ取材に行って、その概要は理解したつもりですが、もう少し詳しくお話を伺いたいです。それと、レースで得たノウハウをトヨタ本体にフィードバックするシステムがよく分かりません。何をどうやって一部の人が獲得したノウハウを全体に広げているのですか?

友山: システムというのは特にないんですよね。結局は人です。レース現場で鍛えられた人材がそのまま市販車の開発に戻っていくので、レースで得た経験とか部品とかがそのまま市販車に生かされるのです。システムがいらないとは言いませんが、システムをいくら変えたって、人がその通り働いてくれなければ機能しません。結局、人が変わらなければ働き方改革はできないんです。

トヨタは2018年、ル・マン24時間レースで悲願の初優勝を遂げた トヨタは2018年、ル・マン24時間レースで悲願の初優勝を遂げた

 レースという短いサイクルの中でパワートレーン、電気、シャシーのエンジニア、さらには評価ドライバーもそこに参加して、一緒になって開発します。従来はそれぞれが別々に開発を進めて、それを1台に組み上げてみてから不具合が発覚し、そこで調整を始めていたのですが、レースという極限の状況の中ではそんな縦割り組織では間に合わないのです。

 だから必要なメンバーの人数を絞り、縦割りを排除して、少数精鋭で情報のやり取りを高い精度で高速で行い、最速のPDCAサイクル(Plan<計画>→Do<実行>→Check<評価>→Act<改善>の4つのサイクル)を回すのです。あるいはレースの場合、本番と同じテスト環境はそうそう頻繁には得られませんから、コンピュータを使ったシミュレーションでやるしかありません。そうやってあらゆるやり方を変えることで、それまで1〜2年かかっていた開発が3カ月でできてしまったりするのです。不可能を可能にするという経験をしたエンジニアが市販車開発現場に戻って、市販車にそのノウハウを適用していきます。

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