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» 2018年07月20日 07時30分 公開

杉山淳一の「週刊鉄道経済」:時差Bizが「満員電車ゼロ」の“最適解”といえる理由 (1/5)

東京都の「時差Biz」キャンペーンが7月9日から始まった。「満員電車ゼロ」を目指して、時差通勤を呼び掛ける取り組みだ。問題点も多いが、キャンペーン自体にはやる意味がある。なぜかというと、満員電車の解決策は一つしかないからだ。

[杉山淳一,ITmedia]

 東京都の「時差Biz」キャンペーンが7月9日から始まった。小池百合子都知事の選挙公約だった「満員電車ゼロ」を目指して「通勤時間を繰り上げましょう」と呼びかけるものだ。このキャンペーンには、ふに落ちない点も多い。しかし、問題があるにしても、この取り組み自体にはやる意味がある。なぜなら鉄道の設備対策が限界だからだ。

 満員電車を減らす施策は数多く打ち出されてきたが、満員電車を構成する要素「乗客」に手を付けるのは最後の手段といえる。もう設備投資や自治体の施策、企業の制度は頼りにならない。乗客が「満員電車に乗りたくない」と思ったら、方法は一つしかないのだ。

photo 「時差Biz」キャンペーンのポスター。「都民の参加」で解決するか?(出典:東京都「時差Biz公式サイト」)

混雑率は年間平均ではない

 まるで時差Bizキャンペーンに呼応したかのように、国土交通省は2017年度の「都市鉄道の混雑率調査結果」を発表した。目標混雑率180%を超えている路線は11路線となり、前年度調査の12路線から1路線の減少となった。減った路線は小田急電鉄だ。3月17日に複々線化工事が完成した。列車の運行本数を増やし、輸送量が増加した。小田急小田原線の調査対象区間「世田谷代田から下北沢」の混雑率は、前年度が192%。大手民鉄で最悪の数字だった。それが17年度は151%と大幅ダウンとなった。効果てきめんだ。

photo 国土交通省が発表した混雑率180%以上の路線。上位に君臨(?)していた小田急電鉄が消えた(出典:国土交通省「都市鉄道の混雑率調査結果」)

 しかし、ダイヤ改正は3月17日で、17年度のうちの14日だけだ。年度というからには年間の平均数値ではないか。そうだとすれば、複々線化後のたった14日で41ポイントも下がるとは大変な効果である。しかし、どう計算してもおかしい。14日間「乗客ゼロ」にしてもこんな数字にならない。いったいどういうカラクリか、調査結果資料では分からない。

 国交省に聞いたところ、「混雑率は年間平均ではなく、鉄道会社が特定の1日の通勤混雑時間の輸送人員を数え、その数字を輸送力で割った数字」とのことだった。つまり、年間平均ではない。たった1日の数字にすぎなかった。特定の1日は、たいていの場合は11月の平日が選ばれるという。学校の長期休みや連休、年末年始など特異な輸送状況にならない日だから、とのことだ。

 赤字鉄道路線の廃止の目安で「平均通過人員」という数字が使われる。JR北海道などで「利用者数が少ないので見直したい」という時に使う数字だ。これは年間の乗客と利用区間を総計し、1日1キロ当たりの利用者数を計算する。つまり年間平均である。

 輸送人員の調査が年間平均だから、混雑率もそうだろうと思ったら違った。年度調査の結果としながらも、実態はその年度の「11月の平日の特定の時間において、乗客数を集計し、輸送力で割った」数字である。実際に発表された表の数値を計算すると混雑率になった。輸送力とは、運行する列車の定員数と運行回数の累計だ。

 混雑率の目安として「ラクに新聞が読める(150%)」「週刊誌程度ならなんとか読める(200%)」などと言われているけれども、これは上記の数字を出した後の話だ。こんな例えを出すから勘違いした。混雑率の数字など、どうせ目視で決めているだろうと思ったら違った。ちゃんと計算で求められている。

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