そんな「昭和の見物型観光」が残念ながら今の時代に通用しなくなってきているのは、阿波おどりを見れば明らかだ。
実はワイドショーなどが総踊りをめぐって大騒ぎするはるか前から、この日本の夏を代表する祭りにはさまざまなケチがついていた。
2016年4月に就任した遠藤彰良市長は、阿波おどりの主催団体である徳島市観光協会に累積赤字が4億3000万円あることを問題視。今年はいよいよ補助金も打ち切り、破産手続きを申し立て、開催自体が危ぶまれていた。一方、『週刊現代』が6月に、観光協会とともに長年、主催社として名を連ねてきた徳島新聞社が、「チケットの買い占め」や「看板広告の利権独占」などのスキャンダルを報じていた。
そんな醜い争いに加えて、日本中の「祭り」が直面している大きな問題の影もちらつく。「高齢化」と「人口減少」だ。
「阿波踊り」利権に群がる人たち
マスコミは今回の騒動だけ切り取って減った減ったと大騒ぎしているが、実はずっと減っている。例えば、昨年は123万人の人手だったが、徳島市統計年報によれば10年前の07年は139万人だった。それが2年後には136万人となって近年は120万人代へ突入している。細かな増減はあっても減少傾向にあるのは明らかだ。
高齢化が急速に進むこれからの日本、特に地方経済では、ある時を境にさまざまなマーケットがフリーフォールのようにガクンと落ち込むとされる。猛暑で高齢者の出足も鈍るなかで、醜聞だらけのイベントが15万人の客からそっぽを向かれるのは、ある意味で当然な結果なのだ。
人口が減少して高齢化が進行する社会では当然、「見物人」も減っていく。それでなお「見物型観光」を継続するには、見物人や利権の奪い合いをするしかない。市側が今回、総踊りを中止をしたのは他の会場のチケットを売るためだ。徳島新聞社と観光協会の内紛も然りだが、このような利権争奪戦が勃発すること自体、阿波おどりが「昭和の見物型観光」であり、そのビジネスモデルが崩壊にさしかかっている証左なのだ。
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