10年間宣伝ゼロのマーガリン 売り上げが突如6倍になった真の理由メーカーも「なぜ売れた」と困惑(3/4 ページ)

» 2018年09月14日 07時00分 公開
[服部良祐ITmedia]

もともとSNSで興味かき立てる商品内容

 謎を解くため、SNSの分析やマーケティングを手掛けるワイズワークスプロジェクト(東京都中央区)の担当者に、この商品がSNSでどのようにキーワードとして浮上したのか解析してもらった。

 担当者によると、「たらこスプレッド」というキーワードがTwitter上で最初に急激に浮上したのは17年5月21日以降のタイミングだった。ちょうどこの日、あるネットメディアがこの商品の紹介記事をアップしていた。「この記事が引き金となった可能性が高い」(担当者)。

 その後、SNSで話題になっているのに気付いたとみられる別のネットメディアも追随して記事を掲載していった。マリンフード自身もその後リリース文を出してメディアにPRした。最初の記事タイトルにあった「罪深き調味料」という文言もSNS上で関心を呼び、拡散していったとワイズワークスプロジェクトの担当者はみる。

 しかし、そこでもわずかな疑問が残る。最初にたらこスプレッドを紹介したメディアはTwitterの公式アカウントのフォロワー数が10万強と、決して零細ではない。ただフォロワー全員が記事を読んで商品を買うわけではなく、競合する類似サイトも多く存在する。大手紙やテレビに比べて消費者への影響力が高いとも言えない。

 記事内容も商品の食べ方を紹介したシンプルなもので、サイト内では他の商品も同じように紹介されている。紹介されたすべての商品がたらこスプレッドのような爆発的ヒットを遂げたとは考えにくい。売れたのはなぜこの商品だったのか。

 ワイズワークスプロジェクトの担当者は「そもそもたらこスプレッドは消費者の興味をかき立てる、SNSと相性のいい商品」と指摘する。ピンクという奇抜な色に加え、たらこという誰もが想像しやすい味付け。「罪深い」「神の味」といった“バズワード”をメディアが広めたこともTwitterでの話題作りにつながったいう。

 400円台という手に取りやすさや、簡単にいろいろなレシピを試せる汎用性の高さも比較的若く好奇心旺盛なSNSユーザーの興味を引いたとみる。ただ「ネットメディアが紹介するまではネット上で『眠っていた』無名の商品だった」(担当者)。

 担当者によると、ネット上で知られていなかった商品がSNSで誰かに紹介されることで唐突に注目を浴びるケースは最近多いという。例えばセブン‐イレブンの「ホットビスケット」。セブン側も特にSNS上で変わったPRをしていなかったが、2017年秋ごろに一般人が写真と簡単なコメントをTwitterにアップしたのがきっかけでブレークした。

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