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“終のすみか消滅”時代 「大企業かベンチャー企業か」という質問が愚問である、これだけの理由就職と転職に悩む若者へ(5/5 ページ)

» 2018年09月27日 08時30分 公開
[森永康平ITmedia]
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ベンチャーでは「経営陣の分析」が重要

 ベンチャー企業に入社を勧める場合であっても、いくつかアドバイスはするようにしている。そのうちの1つを紹介しよう。これは就職や転職に限らず、投資などでも全く同じなのだが、経営陣がどのような人物で、いかなるキャリアを築いてきたのかをしっかりと分析するということだ。経営陣といっても、ベンチャー企業の場合、社長と1人、2人ぐらいしかいないと思われるので、しっかりとその人材を分析して欲しい。

 まず、経営陣全員が卒業してすぐに起業したようなケースは、あまりお勧めできない。仮にそのベンチャー企業がうまくいっていたとしても、その場合は彼らが優秀なだけで、その会社に入っても、ノウハウが盗めるどうかは分からないからだ。

 理想は、経営陣の中に大企業で経験を積んだ人材がいるケースだ。その場合、その人の考え方や働き方、組織の作り方に、大企業で学んだエッセンスが含まれているため、大企業における学びを疑似体験ができる可能性もある。また、そもそも人材に依存しておらず、再現性の高い独自の戦略や仕組み作りといった、今後に生かすことのできる貴重な技術を盗める可能性もあるのだ。

 いずれにせよこれからの時代、新卒として大企業に入ろうが、ベンチャー企業に入ろうが、その1社が「終のすみか」になることは考えにくいだろう。つまり、誰しもが複数の会社で労働経験を積むことになるということだ。仮にこの考えが現実のものになるのならば、重要なのは前述の通り、会社の規模や創業年数といった表面的なことではなく、何をやりたいのか、何を実現したいのかを念頭に置いて、その目的を最短で実現するためのベストを考え抜くことが重要になるだろう。

 このようにいうと元も子もないかもしれないが、大企業にもベンチャー企業にもしょうもない社員はいるし、しょうもない経営陣も存在する。どちらに対しても過度に期待を抱くべきでない。自分勝手といわれるかもしれないが、まずは自分自身について考える癖をつけることが必要だ。会社は自己実現のために利用すればいい。その舞台が大企業なのか、ベンチャー企業なのかは、後からついてくる。

 昨今のベンチャー企業ブームには踊らされるべきではない。しっかりと考え抜いたうえで、判断することが重要だ。もっと大事なことは、自らの市場価値を常に意識し、それを最短で最大化する方法を考えて実践することである。そこさえ意識して実践できていれば、たとえ判断を誤ろうとも、すぐに軌道修正できるのだから。

著者プロフィール

森永康平(もりなが こうへい)

株式会社マネネCEO。証券会社や運用会社にてアナリスト、エコノミストとしてリサーチ業務に従事した後、複数金融機関にて外国株式事業やラップ運用事業を立ち上げる。業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾、マレーシアなどアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、各法人のCEOおよび取締役を歴任。現在は法律事務所の顧問や、複数のベンチャー企業のCFO(最高財務責任者)も兼任している。日本証券アナリスト協会検定会員。株式会社マネネTwitter


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