「火渡修行」にビジネス街での瞑想会 シリコンバレーのエリート社員が仏門に転じた理由悩める人に寄り添う仏教目指す(1/5 ページ)

» 2018年10月29日 06時00分 公開
[昆清徳ITmedia]

 「葬式仏教」という言葉がある。お葬式や法事があるときだけお寺を訪れるのだが、日常生活ではほとんど仏教と縁がない状態を指す。お寺との付き合いを実家の両親や兄弟に丸投げしている読者も多いのではないだろうか。

 もともと仏教とは、苦しむ人を救済するものである――こんな思いから、外資系会計事務所の職を捨て、仏門に転じた人がいる。厳しい「火渡修行」などに励む一方で、ビジネス街で瞑想イベントを開催したり、子どもたちを集めた“現代の寺子屋”活動に取り組んだりしている。悩める人たちとの接点を少しでも増やそうと、寺を飛び出してさまざま活動に取り組んでいるのだ。

 どのような経緯で、ユニークな活動を展開するようになったのか。真言宗醍醐派の僧侶であり、東京と千葉にある2つの寺を運営する金澤真勝氏(49歳)に話を聞いた。

photo 火渡修行に取り組む金澤住職

ビジネスパーソンに仏教の教えを伝える

 まず、金澤住職がこれまで取り組んできた活動をいくつか紹介しよう。

 朝の出勤前に、本格的な瞑想の習慣を身に付けませんか?――。こんなキャッチコピーで瞑想イベントを行っているのは「ココロ寺(じ)」と呼ばれる移動式寺院だ。ビジネス街にあるビルの地下室を使い、午前7時30分から金澤住職による瞑想指導が行われ、午前8時30分には朝食が提供される。2017年4月から本格的にスタートしたこのイベントは利用者に好調で、参加者数が50人を超える日もあるという。

 18年5月には、アップル米国本社マーケティング担当バイス・プレジデント(副社長)兼 日本法人代表取締役だった前刀禎明(さきとうよしあき)氏と組んで、「セルフ・イノベーションアカデミー」の講師も務めた。

 金澤住職は、受講者にビジネスパーソンが多いことを踏まえ、自身の体験やその時々で話題になっているテーマを織り交ぜながら話をしているという。例えば、「ストレスに強い人はどんな考え方をしているのか?」というテーマを取り上げたときは、受講者になじみのあるポジティブシンキングの概念と、仏教の考え方を取り入れた内容にしている。

photo ビジネス街の地下で瞑想のイベントを開催
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