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続・自動車メーカーの下請けいじめ池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)

» 2018年12月03日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]

CASE2:値下げをしたらしたで……

 ある部品メーカーは、大手自動車メーカーから値下げ要求をされた。単価231円で数万ユニットを納入していた部品を220円に指値される。その価格では利益が出ない。たび重なる値下げ要求に耐えきれず、生産方法を見直してやっとのことで、価格低減に成功し、メーカーの指値を下回る218円で価格を提示できた。ところが、その価格を提示してさぞかしほめられると思いきや、そうはならなかった。「これまで値下げできなかった理由を説明せよ」と追及されたのである。

 さて、これはどう考えるべきだろうか? 筆者から見るとこの下請け業者はかなり危険な状態にある。自主的にカイゼンを進めて、自社製品、ひいてはメーカー製品の価格競争力を高めようとしていない。言われなければやらない。それはチームメンバーとしてかなりレベルが低い話ではないか? むしろ指摘される前に、とっとと生産方法の見直しを行っていれば、値下げを要求される前に自社利益を増やしてもうけることだってできたはずだ。

 そのチャンスを見逃しておきながら、恨みがましいことを言うのは筋違いだ。説明を求められるのは当然だとしか思えない。

トランスミッションのような複雑で開発コストのかかるユニットを納品するサプライヤーは規模が大きい トランスミッションのような複雑で開発コストのかかるユニットを納品するサプライヤーは規模が大きい

原則

 日本には下請法という法律があり、3つの行為が禁止されている。「買い叩き」「支払い遅延」「役務提供」だ。実現不可能な金額を取引上の立場を利用して押し付けたり、納品から支払いの期間を遅延させたり、社員の手伝い派遣などを常識の範囲を超えて押し付けたりする行為だ。

 上に挙げた2つの件はこの「買い叩き」に該当するとして批判を受けているわけだが、CASE1では他のメーカーが実現している価格であること。CASE2ではカイゼンによって実現可能な価格であることがはっきりしている。可能なことをやっていなかっただけだ。それを「かわいそう」の文脈で語っていたら、永遠に噛み合わないだろう。

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