世界に誇る高い技術を持つ日本の自動車メーカーで権力の座に収まった外国人経営者が、金の亡者と化してやりたい放題――。
そんな東京地検特捜部側の「ストーリー」に基づいて起訴までこぎつけた「ゴーン事件」だが、ここにきてそれを根底から覆すような情報がボロボロとたて続けに出てきている。
まずは先週流れた、ゴーン氏が退任後に受け取る報酬の「名目」について記載された文書に、西川廣人社長のサインがあったというニュースだ。
有価証券報告書で報酬を低く見せた疑いをかけられたゴーン氏が「極悪人」ならば、そのスキームを承認していた腹心の部下も「共犯者」の誹(そし)りを受けなくてはならないのは当然だ。事実、ゴーン氏の指示を受けてこの“後払いスキーム”にかかわったとされる外国人秘書室長は逮捕を免れるために司法取引をしている。にもかかわらず、なぜ西川社長だけが「正義の人」として扱われるのか、先の「ストーリー」からは理由が分からない。
さらに注目すべきは、12月10日に米・ウォールストリートジャーナルや週刊ダイヤモンドが報じた新事実。なんと逮捕前、ゴーン氏は業績悪化を理由に西川社長の更迭を検討していたというのである。
ご存じのように、今回の事件は当初から「クーデター説」がまことしやかにささやかれている。ルノーとの経営統合を進めるゴーンに対して、西川社長ら日産プロパーが反旗を翻し、特捜部に情報を持ちかけて、合法的に経営層から追放したというのだが、報道が事実なら、それが一気に真実味を帯びてくる。社長の座を追われたら、ルノーの「侵略」に抵抗できない。ならば、ゴーンからクビを言い渡される前に――。このような「刺される前に刺す」というのは、独裁者の側近が裏切る行動心理の王道だからだ。
これらのことからも、「ゴーンだけが悪人」という検察の「ストーリー」はもはや崩壊寸前と言っていい。むしろ、海外メディアが、西川社長を織田信長の寝込みを襲った明智光秀に重ねているように、一連のゴタゴタを「西川の乱」と捉えたほうがはるかにスッキリするのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング