「腕時計は要らない」派の記者がセイコーの新型体験店に行ってみた「インスタ映え」にも対応(2/3 ページ)

» 2018年12月20日 12時47分 公開
[昆清徳ITmedia]

歴代の時計とミニチュアが楽しい

 まず、1階にはセイコーがこれまで販売してきた時計が展示されている。例えば、歯車の形をした台の上に1982年に発売された「テレビウオッチ」と、ミニチュアが並べて置いてある。商品開発の歴史に触れられるので、“企業博物館”として楽しめるように感じた。また、歯車のオブジェがそこかしこに並べられているので、時計の内部に入り込んだかのような感覚が味わえる。「インスタ映え」が好きなお客はきっと撮影しまくるのではないだろうか。

 2階は深海をイメージしたフロアになっており、「プロスペックス」のダイバーウオッチが並んでいる。フロアの中心部には深海に潜ったような体験ができるディスプレイが備え付けてあり、上から手をかざすことで時計がどのくらいの水圧に耐えられるのかが視覚的にわかるような仕掛けになっている。これならば、小さな子どもも喜んで操作できそうだ。

 3階は女性向けブランド「ルキア」と「プレザージュ」が展示されている。こちらのフロアは薄暗い2階とは違い、明るく開放的な雰囲気になっている。日本の色彩美をイメージした展示がされており、美術館で鑑賞しているかのような体験ができる。このフロア以外にも、階段などに“美的センス”を感じさせるデザインが施されている。

 4階は「スポーツや宇宙が好きな男性」をターゲットにした展示になっている。具体的には、男性向けブランド「アストロン」に搭載されているGPS機能を体感できるディスプレイがある。フロア全体が男性の“理想の部屋”をイメージしたようなつくりになっており、壁にはテニスのラケットやおしゃれな照明器具が並んでいる。

時計を買わなくても楽しめる

 記者が全てのフロアを見て回った感想は「時計を買わなくても楽しめる」「時計に興味がなくても、ふらっと立ち寄れる」というものだ。「インスタ映え」する実演や装飾があるので、幅広い客層を取り込める可能性があると感じた。

 セイコーは世代や性別を問わず、腕時計のユーザーを増やそうとしている。そのためには「携帯電話があるから腕時計にはこだわらない」という層にも商品をアピールする必要がある。来店のハードルを下げる仕掛けづくりにかなり力を入れている印象だった。あとは、来店したお客に対して、店員が商品の魅力をどのようにアピールできるかがカギになるだろう。

 1つ懸念があるとすれば、この新店が観光スポットになって混雑すると、買い物体験を楽しめなくなるお客がでるかもしれないということだ。各フロアは15人以上のお客が入ると手狭に感じられるので、その点は何らかの改善が求められるかもしれない。

 セイコーは新しい試みによって、どれだけの新規ユーザーを獲得できるだろうか。

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