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「佃製作所はやっぱりブラック企業」と感じてしまう、3つの理由スピン経済の歩き方(1/6 ページ)

» 2019年01月08日 08時07分 公開
[窪田順生ITmedia]

 先週、ドラマ「下町ロケット」(TBSテレビ)の新春特別編が放映され14.0%という高視聴率を叩き出した。

 このドラマは、ロケット技術者から町工場の社長となった主人公・佃航平と、彼が率いる「佃製作所」の社員たちが高い技術力を武器に、さまざまな困難に立ち向かって夢をつかむというストーリー。「ものづくり」に情熱を注ぐ技術者たちが織りなす感動ドラマに、お正月から胸が熱くなったという方も多かったのではないか。

 かく言う筆者もそのなかの1人なのだが、そういう個人的な感想をちょっと脇に置き、このドラマの内容と高視聴率を客観的に眺めてみると、ぶっちゃけ、日本の未来に対する「不安」しか感じられない。

ドラマ「下町ロケット」の内容を客観的に受け止めると……(写真提供:ゲッティイメージズ)

 こういうドラマに熱狂し、留飲を下げる人がこれだけ世に溢れ返っているということは、日本の「ブラック労働」を礼賛するカルチャーもまだまだしばらくは健在ということだからだ。

 「あんな素晴らしいドラマにワケの分からない因縁をつけるな!」と2019年の“キレはじめ”となってしまった方もいらっしゃるかもしれないが、「下町ロケット」をディスるつもりは毛頭ない。むしろ、個人的には、先ほども述べたように、見た者の心を打つ素晴らしいエンタメ作品だと思っている。

 ただ、これから日本の労働現場であらためなくてはいけない「悪しき労働文化」が、このドラマで肯定的に描かれているどころか、現実にはあり得ないほど美化されてしまっているのは紛れもない事実だ。

 高校野球、大学スポーツ、アマチュアスポーツ団体などで体罰・パワハラ上等というゴリゴリの体育会カルチャーが根付くこの国で、常軌を逸した体罰や“しごき”を美化するスポ根アニメ・ドラマが公共電波でじゃんじゃん流されていたことを踏まえれば、「下町ロケット」が労働現場に与える影響を見くびってはいけない、と申し上げたいのである。

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