レクサスUX コンパクトSUVと呼ばないで!池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/3 ページ)

» 2019年01月21日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]

 レクサスUXは、率直に言って走りそのものに関しても、内外装のデザインに関しても出来は良い。最廉価モデルで390万円、高いモデルで509万円の価格に対して十分な価値を持つものだと言えるだろう。

全長4495mm、全幅1840mm、全高1540mmのコンパクトなボディを与えられたレクサスUX 全長4495mm、全幅1840mm、全高1540mmのコンパクトなボディを与えられたレクサスUX

GA-Cプラットフォームのハイエンドモデル

 もちろん意地悪な見方をすれば、シャシーはプリウス(252万〜328万円)、C-HR(229万〜298万円)、カローラ・スポーツ(211万〜268万円)と共通のGA-Cプラットフォームなので、同一プラットフォームの中で考えれば割高にはなる。しかし、そのプラットフォームも実は完全に同一というわけではなく、接合法や素材に相違点がある。UXではレーザースクリューウェルディング(レーザー溶接の一種)や構造用接着剤、アルミの多用などで、GA-Cを採用する他モデルと比べて高剛性かつ軽量に仕上げているという。

 プラットフォームは確かにクルマを峻別する1つの目安ではあるが、それだけを見てクルマを評価するのはさすがに一面的すぎるし、費用対効果を重視するならば最も廉価なカローラを買えば済む話だ。さらにミニマリズムに徹するなら軽自動車という選択肢もある。日本の馬鹿げた税制を考えれば、維持費までトータルで見てずっと賢い。だがそういう指向の人ではないからこそレクサスのショールームに行くのだろうし、プラットフォームでとやかく言うのはしょせん買わない人の理屈である。

現行型プリウスで登場したFF用のGA-Cプラットフォームをベースに、AWDではリヤにモーター駆動を備える 現行型プリウスで登場したFF用のGA-Cプラットフォームをベースに、AWDではリヤにモーター駆動を備える

ラグジュアリーについて考える

 では、購買層にとってどうかと言えば、好みの問題はあれど、日々目にする内装のデザイン1つ取ってもトヨタのクルマとは様子が違う。トヨタがそれでいいのかという問題はさておいて、身の回りにあって欲しいもののデザインとして、UXのインテリアは恐らく納得がいくだろう。カッコ良くないものとは付き合えない人にとって、それは財布を開く十分な価値となることは想像が付く。

 そういう意味でプレミアムとは、即物的なものではなく、かなり内面性の高い商品なのだ。問題はレクサス側のUXに対する説明がどうも釈然としないことだ。根底の部分は間違っていないと思うのだが、それを詳細に語っていくとだんだん首肯しにくくなっていく。

 UXのカタログの冒頭にはこうある。

 「ラグジュアリーカーを見極める真の基準は、クルマそのものの価値と、クルマが生み出す心躍る体験にあると私たちは考えます」

 これはもうその通り。機能的に素晴らしくても、良くできたトラックやフォークリフトではラグジュアリーにならない。主観世界に描かれる体験、つまり「そのクルマと自分の関係性」に何がしかの高揚感が伴わないとラグジュアリーにはならない。

 何もテンションが上がりまくるものでなくても良い。そこはかとなく嬉しかったり楽しかったりするものでも構わない。けれども、心が躍ることはラグジュアリー商品にとって重要だ。

 そういう根底の上に乗っかるUXの車両コンセプトが「Creative Urban Explorer」で、頭文字を取ってCUE、すなわち「きっかけ」と説明が進んだ辺りで、筆者の中で温度感を失ってしまう。無論「都市の冒険者」の単語的意味は分かるが、例えばあなたの回りに「あいつはUrban Explorerだ」という人がいるだろうか?

 英語を使うなとは言わないけれど、それはそこにちゃんと地に足が付いた意味がある場合に限られる。レクサスが英語ごときで煙りに巻こうとしているとは決して思わないが、伝える中身と向き合う意味において言葉に込められた実感が少々希薄なのではないかと思う。

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