2018年12月の臨時国会で、70年ぶりとなる改正漁業法が成立した。同法案の改正は、企業の新規参入を促すなど、漁業を成長産業につなげるための第一歩となる。
今回の漁業法見直しのポイントは2つある。1つ目は「漁獲可能量の管理強化」だ。現在、漁獲可能量が設定されているのは、クロマグロ、サンマなどの8種だけで、今回この対象を広げ内容を強化する。乱獲を防ぎ、市況のよい時期に計画的な出漁を促すことにより、生産性向上、資源保護につながる。
2つ目は、「漁業権(※1)の優先規定廃止」だ。従来は漁業権を割り当てる際に、地元の漁協や漁業者を優先していた。その規定を廃止することで、企業が漁業へ参入しやすくする。
政府は、この漁業法の改正と合わせ、19年度の水産関係の当初予算案を2167億円(前年度1772億円)と、前年度から2割以上積み増し漁業改革に注力する。
※1 一定の水面(通常、岸から3〜5kmまで)において、漁船漁業、養殖業などを排他的に営む権利
今回の改正は、企業が漁業に参入することを容易にすることで、既存の漁業者の締め出しにつながる恐れがあるとの主張から、野党や地元漁業者からの反発が大きかった。それでも、政府が漁業法の改正を断行したのは、日本の漁業が大きく低迷しているからだ。
日本の漁業就業者数は、50年以上一貫して減少を続け、平均年齢は56.7歳と高齢化が進んでいる。
漁業先進国と呼ばれるノルウェーと比べ、日本の漁業者1人当たりの生産量は10分の1以下、漁船一隻当たりでは30分の1以下となっている(図表1)。生産性が低ければ、当然その分収入も少なくなり、漁業への新規就業者は減る。
生産性が低い背景には、日本漁業の特徴である「小さな経営体」と、「緩い資源管理」が指摘されていた。漁業においては、漁船が最も重要な生産手段であり、資本投入をすることで生産性向上へ寄与する。しかし、日本は漁業経営体約8万のうち94%が個人経営体であり、多額の設備投資が難しい。
その結果、設備の老朽化により生産性が低下するとともに、漁業者は、相対的に生産性が低い小型船での沿岸漁業に集中してしまっている。
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