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「東大博士の起業家」ジーンクエスト高橋祥子が考える“ポスト平成の働き方”「平成育ちの起業家」の肖像(2/6 ページ)

» 2019年02月27日 06時15分 公開
[大宮冬洋ITmedia]

科学は悪用しようと思えば悪用できる

――貴社の競争力について教えてください。他社に比べて技術的に優れているのでしょうか?

 DNAの配列を大規模に解析する機器は、世界中の企業や研究機関がほとんど同じものを使っています。イルミナ社製のものが市場の多くを占めています。

 遺伝的なバックグラウンドは人種によって全く異なります。欧米では個人向けのサービスを通じたゲノムデータ収集が進んでいますが、日本やアジアでは私が起業した当時は誰もやっていませんでした。弊社は今、民間企業で日本人の大規模なゲノムデータを多く持っており、その方の生活習慣などさまざまな属性情報も取得しています。

 それらのデータを解析することは「バイオインフォマティクス」といわれています。医療だけでなく、食品や化粧品などさまざまな業界に応用可能です。バイオインフォマティクスは私が学生時代から研究してきた専門分野であり、弊社にも優秀なメンバーをそろえています。それが当社の強みです。

phot

――遺伝子の情報を大量に集めていると聞くと、遺伝子操作などの不安を感じてしまいます。

 ドローンやAIなどにもいえることですが、科学は悪用しようと思えば全て悪用できます。中国のデザイナー(遺伝子操作)ベビーなども一つの事例ですね。ただし、科学自体が悪いわけではありません。科学を使ってどのような未来を描きたいのかが大事なのです。そこには倫理やリーダーシップも必要でしょう。

 ゲノム解析に関しては、難病治療や疾患研究などへの期待が高まっています。例えば希少疾患といわれる病気の研究のためには、多様で膨大なデータが欠かせません。中には3人に1人がかかるような病気ではなく、1万人に1人の確率で発症する病気もあります。100万人分ぐらいのデータを集めることができればさまざまなことができるようになるでしょう。

phot ジーンクエストの遺伝子解析サービスで使用する検査キット
phot 自動販売機でも販売されていた
phot 社内に置かれていた資料など

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