しかも先ほど説明したように副業の収入は平均的な残業代よりも安いので、もし上記のように残業を副業でカバーする状況になると、経済全体では単に賃下げしただけの効果しか得られない。
つまり、副業によるキャリアの複線化といったプラスの効果を発揮させるためには、場当たり的ではない、本来の意味での働き方改革の実現が不可欠となる。
中小企業庁が行った実態調査によると、発注する大企業が残業時間を削減するため、中小企業に仕事を丸投げするケースが増えており、6割の中小企業が納期を短くするよう求められたと回答している。また機器の搬入など、休日でなければスムーズに実施できない業務についても、発注側の社員が休日出勤できないため、無理なスケジュールが強要される事例も報告されている。
働き方改革関連法は4月から施行されるが、中小企業については1年間の猶予があり、適用されるのは20年4月からとなっている。つまりそれ以降は、中小企業であっても違法残業は処罰の対象である。働き方改革を実現するためにも、そして副業を社会に定着させるためにも、徹底した業務のムダの見直しが求められている。
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。
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