労働という言葉自体が存在しなかった日本では「働くこと=人が動くこと」。時間は働き手が自分でコントロールできるものでした。ところが、“労働”が輸入されたことで、人よりも時間の方がエラくなってしまったのです。
「遊び」の効用を私たちは経験から知っているはずなのに、今の日本の職場には遊びがない。誰もが「生産性をあげなきゃ日本は生き残れない」と豪語するのに、ものづくりに必要な発想力やひらめきは「どういう状態(=働き方)で生まれるのか?」といった、“人”を主役にした議論は置き去りにされているのです。
そして、その視点の欠如が、働きがいを奪い、ギスギスした人間関係をもたらし、メンタルを低下させる人たちを量産している。そう思えてなりません。
人工知能(AI)がさまざまな職場に入り込む時代の人間に期待されるのは「創造性」です。
発想力や想像力は、脳に少しばかりの空きスペースができたときに生まれるもの。新時代を生き残るには「やるときゃやるけど、基本はダラダラ」が必要なのです。
実際、ボーっとする無駄な時間が、人間の想像力をかき立てることは、さまざまな心理学実験などでも確かめられています。
例えば、英イーストアングリア大学教授で、心理学者のテレサ・ベルトンらは、過去の学者たちが明らかにした「無駄の時間の効用」の文献をレビューし、心が無になるような退屈な時間を経験することのある人ほど、発想力や創造力が豊かで、新しいことにチャレンジする傾向が強いことを明かしました。
10連休が終わり、メディアでは「五月病特集」ばかりが横行していますが、もっと休むことの意義を考えてほしいです。
そして、あなたも、休む勇気をもってください。あなたの周りの人と共に「もっと休もう!」を合言葉にしてください。
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)
2017年発売の『他人をバカにしたがる男たち』で解説した「ジジイの壁」の背景となる「会社員という病」に迫ります。
“ジジイ”の必殺技は「足を引っぱる」こと。
公の場で「彼女の発言を補足しますと……」と口を挟んでしまう“面目つぶし”、「私は指示したのですが○○が動かなくて……」と相手を悪者にする“責任逃れ落とし”、他人に関する必要のない情報を上司に伝える“アピつぶし”、そして“学歴落とし”や“悪評流し”――。
不毛な言動に精を出して「ジジイ化」してしまう人たちのジレンマと不安の正体について解説します。
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