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なぜ日本人は「労働の奴隷」に? 新時代の働き方のヒント河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/4 ページ)

» 2019年05月10日 10時16分 公開
[河合薫ITmedia]
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 労働という言葉自体が存在しなかった日本では「働くこと=人が動くこと」。時間は働き手が自分でコントロールできるものでした。ところが、“労働”が輸入されたことで、人よりも時間の方がエラくなってしまったのです。

 「遊び」の効用を私たちは経験から知っているはずなのに、今の日本の職場には遊びがない。誰もが「生産性をあげなきゃ日本は生き残れない」と豪語するのに、ものづくりに必要な発想力やひらめきは「どういう状態(=働き方)で生まれるのか?」といった、“人”を主役にした議論は置き去りにされているのです。

 そして、その視点の欠如が、働きがいを奪い、ギスギスした人間関係をもたらし、メンタルを低下させる人たちを量産している。そう思えてなりません。

ボーっとする時間が「創造性」を生む

 人工知能(AI)がさまざまな職場に入り込む時代の人間に期待されるのは「創造性」です。

 発想力や想像力は、脳に少しばかりの空きスペースができたときに生まれるもの。新時代を生き残るには「やるときゃやるけど、基本はダラダラ」が必要なのです。

 実際、ボーっとする無駄な時間が、人間の想像力をかき立てることは、さまざまな心理学実験などでも確かめられています。

 例えば、英イーストアングリア大学教授で、心理学者のテレサ・ベルトンらは、過去の学者たちが明らかにした「無駄の時間の効用」の文献をレビューし、心が無になるような退屈な時間を経験することのある人ほど、発想力や創造力が豊かで、新しいことにチャレンジする傾向が強いことを明かしました。

 10連休が終わり、メディアでは「五月病特集」ばかりが横行していますが、もっと休むことの意義を考えてほしいです。

 そして、あなたも、休む勇気をもってください。あなたの周りの人と共に「もっと休もう!」を合言葉にしてください。

河合薫氏のプロフィール:

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 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。

 研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)


新刊『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)が発売されました!

 2017年発売の『他人をバカにしたがる男たち』で解説した「ジジイの壁」の背景となる「会社員という病」に迫ります。

 “ジジイ”の必殺技は「足を引っぱる」こと。

 公の場で「彼女の発言を補足しますと……」と口を挟んでしまう“面目つぶし”、「私は指示したのですが○○が動かなくて……」と相手を悪者にする“責任逃れ落とし”、他人に関する必要のない情報を上司に伝える“アピつぶし”、そして“学歴落とし”や“悪評流し”――。

 不毛な言動に精を出して「ジジイ化」してしまう人たちのジレンマと不安の正体について解説します。

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