そんな新時代のリーダーの中でも、意欲的な若者たちに影響を与えている代表的人物は、ホリエモンこと堀江貴文氏ではないかと思っています。というのも、先ほど「多動性の潮流」と表現しましたが、自分の可能性を追い求めてあらゆる行動を取る彼らの姿は、まさにホリエモンが提唱する「多動力」そのものだからです。
2017年5月に刊行されたホリエモンの著書『多動力』(幻冬舎)は、発売から重版が続き、いまや30万部を突破しているビジネス書のベストセラーです。
その中で堀江氏は、多動力とは《いくつもの異なることを同時にこなす力》であるとし、同書カバーの袖には、まえがきから抜粋された次のような文章が記されています。
《IoTという言葉を最近ニュースでもよく耳にすると思う。これは、ありとあらゆる「モノ」がインターネットにつながっていくことを意味する。すべての産業が「水平分業型モデル」となり、結果“タテの壁”が溶けていく。このかつてない時代に求められるのは、各業界を軽やかに越えていく「越境者」だ。そして、「越境者」に最も必要な能力が、次から次に自分が好きなことをハシゴしまくる「多動力」なのだ。》
このような導入ののち、ホリエモンは「三つの肩書を持てばあなたの価値は1万倍になる」「見切り発車は成功のもと」「99%の会議はいらない」など、多動力を身に付けるための31のアイデアを提言しています。私も同書を読みましたが、賛同する部分が多く、とても勉強になりました。
でも、ちょっと待ってほしいんですよ。
多動性を重視し、合理的に動こうとする若者が増えた結果、過剰なほどに無駄を敬遠するケースが目立つようになっていませんか?
例えば、ホリエモンの「飽きっぽい人ほど成長する」を曲解し、自分に合わない職場だと感じたら、ロクにスキルを身に付けることもなく、入社からわずか数カ月で辞めてしまう人。同様に、彼の「電話をかけてくる人間とは仕事するな」を都合よく解釈し、直接会っての対話や電話連絡が常識とされる重要な報告においても、一方的なメールで済ましてしまう人。揚げ句の果てには、退社時にはこの合わせ技で、ただメールで「辞めます」とだけ送り、いなくなってしまう人も増えているようです。
ほかにも、会社の飲み会も良い例です。歓迎会や送別会だけでなく、仕事終わりの飲みの誘いを「給料も出ないのに、職場の人と付き合うメリットはないから」と断ったり、上司からちょっとしたおつかいを頼まれたときにも「それって俺の仕事ですか?」と口答えしてしまったり……。
彼ら若者は、こうした行動を悪いとも思わず、むしろ誇らしいとさえ思っている節があります。実際、TwitterなどのSNSには、そんな書き込みがあふれてるでしょ? 上司を老害扱いし、旧態依然とした会社の仕組みや人間関係を過剰にたたき、異を唱えるツイートには賛辞を送るような風潮が漂っています。
まるで、無駄を省いて自分の利だけを追求した先に、自身の成功が待っている。彼らがそう信じて疑っていないような気がしてなりません。
しかし私は、こうした若者の言動は「多動力の悪影響」だと思っています。
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