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ホリエモン的“多動力”の逆張りで生きよう えらいてんちょうの“ショボい”キャリア論“静止力”で地方の名士になる!?(3/5 ページ)

» 2019年08月16日 07時00分 公開

ホリエモンは「永遠の3歳児」

 極端な話ですが、もしもホリエモンの提唱する「多動力」を国民全員が実践したら、間違いなく日本はメチャメチャになっちゃうと思うんです。

 彼は「すべての仕事はスマホでできる」と豪語しますが、私からすれば「じゃあ、ゴミ収集は誰がやっているの?」という話です。私たちが生活する社会は、あらゆるインフラを支える多くの労働者によって成り立っています。ところが、彼の言う「すべての仕事」に、そうした人々の仕事は含まれていないのです。

 もちろん、すべての人が公務員になっても国はメチャメチャになります。しかし、価値観の変化というものはとても大きなものです。徹底した合理主義によって、ホリエモンが成功者というポジションを築き上げたのは紛れもない事実ですが、時に我を通して進み続け、社会を支える労働者を軽視したり、日本人が受け継いできた歴史や伝統をないがしろにしたりする言動には賛成できません。

 だから、私はホリエモンにこう言いたい。「堀江さん、あなたの考えは子どものワガママのようなものですよ」と。きっと彼は気にも留めないでしょう。なぜなら、彼自身が「永遠の3歳児たれ」と提唱し、意識的に3歳児たる好奇心とワガママを貫こうとしているからです。彼が行動する目的は極めてシンプルで「楽しい」や「面白い」なんです。

 これはある著名な方がトークショーでおっしゃっていたことですが、日本ではイチローや大坂なおみなど、何かを成し遂げた人たちが褒められる。けれど彼らはそれを「好き」でやってきた結果であり、好きなことをして褒められているだけなんですよね。

 一方で、ゴミ収集や下水道関係など社会的に必要だけど敬遠されがちな仕事をしている人、すなわち「人が嫌がる仕事をやっている人」たちには感謝の言葉もなく、目も向けられないこともある。ここに強い違和感があるんです……と。

「多動力に踊らされるな」

 もちろん「好き」を貫いたところで、誰もがスーパースターになれるわけでもなく、単純にイチローや大坂なおみがスゴイのは理解しています。でも、もう少し、実社会を見渡して考えてみてもいいんじゃないかと思うんですよね。

 話が逸れました。

 でも、このようなホリエイズムの象徴たる多動力が、世の中の趨勢(すうせい)になったら困るじゃないですか。1億総ホリエモン社会とか、想像したくもないですよね? とどのつまり、彼が言うところの「バカ真面目な大人たち」がたくさんいるからこそ、社会の維持が可能なわけであって、ホリエモン自身が3歳児でいることは一向に構わないけど、私たちは多動力に踊らされてはいけないんですよ。

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