このような状況もあり、生活者が洋服をクリーニングに出す頻度が減少しているのではないかと感じていました。実際に筆者自身もスーツを着る機会が激減し、一時期はワイシャツのクリーニング枚数が半減しました。夏場はTシャツにジャケットというスタイルも増え、クリーニングに出す洋服が1枚もないという週もありました。
そこで、クリーニング市場に起きている変化を分析してみました。
全国にあるクリーニング店舗数の10年間の推移を見てみると、右肩下がりで減少が続いていました。最盛期には16万3000店舗あったクリーニング施設数は、2013年に13万3000店舗になりました。さらに、18年には8万9900店舗まで減少しています。機械設備をもった一般施設は3万4000店舗から2万2200店舗へと大幅減です。パパママストアの多い業界でもあることから、事業継続が難しい面もあり、廃業している店舗が多いという特性もありそうです。
しかし驚くのは、取次所も大幅に減少していることです。一時期は店舗増加により過当競争が問題視されていました。そんな取次所が減少しているというのは、やはり構造的に難しい市場であることを意味しています。
では、クリーニングの消費環境はどうなっているのでしょうか。消費者の消費実態を示すMS(マーケットサイズ=消費支出金額)を分析します(ここでは全国全世帯ベースでの月別のMSの変化を見ます)。
国内の全世帯ベースでのクリーニング消費支出は、16年から軒並み減少傾向にありますが、20年2月からそれが強まり、季節指数の高い3〜5月に落ち込みが大きかったことが分かります。それ以降も消費は戻っておらず、年間でも前年比78%程度の4647円という世帯MSに落ち着きそうです(10〜12月は筆者推測値)。
クリーニング事業者にとっては非常に厳しい年になっているのです。
これを勤労者世帯と比較してみましょう。
勤労者世帯では、全世帯平均よりもワイシャツやスーツなどのクリーニングを出す頻度も金額も多いのが特徴です。7月からは少し回復傾向にはあるものの、やはり前半の落ち込みが大きく、年間を通して80%程度の消費支出に止まるというのが実態です。
こうした状況を踏まえると、クリーニング事業者は今まで通りの経営をしていたら売り上げは8掛け程度になってしまいます。クリーニングの料金設定は、この20年間ほぼ変化していません。ワイシャツで220〜230円です(総務省「小売物価統計調査」)。しかも、クリーニング事業者は個人経営が多く、その95%が従業員4人以下の零細企業です。そして経営者の50%以上が70代以上という高齢化が進んだ業界です。消費支出減、低価格、零細企業、高齢化。このような市場において打開策はあるのでしょうか。
まずは白洋舎の決算数値から、現状と対策を考えてみたいと思います。
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