井上監督は、これまでの「目指すは優勝のみ」という方針から、もちろん優勝は狙いつつ、「仮に1位を逃しても、3位決定戦で勝つ」という意識へと変革させた。全力を尽くして敗れた選手には「次に生かそう」と鼓舞し、報道陣には「勝たせてあげられなかった私の責任」と擁護した。また選手個人任せだった筋力トレーニングをチームの練習メニューに組み込み、栄養学の専門家も招いた。
さらには前体制で消極的であった映像研究も行い、海外勢の試合を数万単位で分析して、海外勢のデータにない技を増やしたり強化したりするなどの対策をとった。コロナ禍により合宿で集まれないとなると、定期的にオンラインミーティングを開き、選手の稽古の現状や体調を把握したほか、海外勢の傾向などの情報や五輪に向けた心構えなどについても共有した。
もちろん、勝利を目指す選手自身の強い意志と努力が根底にあったことは間違いないが、日本勢躍進の結果をもたらしたのは、旧来からの意識を大きく変革できたことと、具体的な行動の積み重ねによるものなのである。
さて、視点をビジネスに移そう。先日ネット上で、「某上場不動産会社におけるパワハラ電話音声流出」という騒ぎがあった。
上司からかかってきたと思われる電話を録音したものなのだが、会話の中には「お前、約束できるんか?」「反省しないと先はないぞ」「人のことを小ばかにしている。だから、リスペクトの気持ちもないし感謝の気持ちもないし、それがお前の生き方だ」――など、「業務上の指摘」という範ちゅうを超えて、部下の人格否定を繰り返しているように捉えられる内容があった。これは「精神的な攻撃」であり、れっきとしたパワハラに当たるものだ。
ネット上では「上司のいい方はひどい」「会社も、こんな人を管理職にしてはいけない」という反応が多かったものの、一部の同業種の人たちや、スタートアップ企業で管理職的立場にいる若手の人たちなどからは意外にも、上司や会社を擁護するような発言が見られた。
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