リテール大革命

「おもしろい!」が95% コクヨの“実験店舗”はどんなところなのか「実証実験」の結果(3/4 ページ)

» 2021年09月19日 08時05分 公開
[土肥義則ITmedia]

実証実験を行ってよし

 「アナログとデジタルを融合させた店」といっても、実現するのにどのようなハードルがあったのだろうか。これまで新商品がでてもデジタルを使った施策ができていなかったことを考えると、今回の店舗はいきなり“10年ほどワープ”したような取り組みである。

 この質問を投げかけたところ、やはり困難が待ち受けていたようだ。どんなことがあったのかというと、社内から「そもそもARってなに?」といった質問がでてきたという。日本語でいえば、「拡張現実」である。もちろん、このような言葉を使っても、話は前に進まない。「実在する風景にバーチャルの視覚情報を重ねて表示することで、目の前にある世界を仮想的に拡張する技術」などと説明したところで、「よーし、分かった。それでいこう!」という人もいない。

文字を集めていくと、ある単語に

 三上さんは何度も何度も企画書を書くものの、前に進まず。プレゼンを繰り返しても、「OK」の二文字を手にできない。言葉で説明してもなかなか理解してもらえなかったので、他社サンプル版を体験してもらうことに。ただ、色よい返事はなかなかでなかった。「で、これを使って、どうやって売るの?」「売り上げは伸びるの?」といった厳しい声が相次いだ。

 その一方で、「これ、おもしろい!」といった声もあった。アナログとデジタルを融合させた店は未来感が漂う。しかも、エンタメ要素や動画などを取り入れると、これまでになかった体験をウリにできるかもしれない。何度も何度も説明していくうちに、新しい仲間が一人ずつ増えていった。また一人、また一人と。仲間を増やすことによって、「実証実験を行ってよし」の決裁が下りたのだ。

 実験は8月23日にスタート。取材時(9月14日)までに、どのようなことが分かってきたのだろうか。現在、実証実験中のためショップでARコンテンツを利用できるのは取引先など関係者のみで、実際に体験した215人にアンケートを実施した。実証実験の店舗はおもしろかったかどうかを聞いたところ、「おもしろい(ややを含む)」と答えたのは95%、「商品理解の向上につながった(ややを含む)」は80%。いまのところ、想定を上回る結果となっているのだ。

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