「旧統一教会」は海外でどんなビジネスをしているのか “見逃せない”事実に迫る世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)

» 2022年07月21日 07時37分 公開
[山田敏弘ITmedia]
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表向きはビジネスでも……

 米シカゴ・トリビューン紙は「寿司好きな人たちのほとんどは、間接的に文鮮明の宗教運動を支援している自覚はないかもしれないが、間違いである。多くのレストランで脂の乗ったツナやうなぎを一切れ食べると、文鮮明の宗教運動をまさに支援していることになる」とまで書いている。

 同紙は、旧統一教会の広報担当者のコメントも掲載している。それによれば、「True World Foods」は旧統一教会に組織的に組み込まれているわけではないという。その上で、マリオットホテルの創業者はモルモン教徒だが、だからと言って「マリオットホテルに滞在した人がみんなモルモン教に関わったとは思わないでしょう」と述べている。

 もちろんそれはそうである。ただマリオットとつながりのあるモルモン教が、旧統一教会が実施してきた霊感商法のような怪しいビジネスに手を染めて、多額を信者から吸い上げてきたという話は聞かない。モルモン教徒も寄付はあると信者から聞いたことがあるが、その額は信者それぞれの所得の1割だということだった。そこそこ多額な寄付だと思うが、それでも、山上容疑者の母親のように自らの生活を犠牲にして多額の寄付をするようなことはさせない。

多額な寄付を募る(画像はイメージ)

 暗殺事件に絡んであらためてクローズアップされた旧統一教会。霊感商法でワイドショーを騒がせた時代からあまり目立ってこなかったが、山上容疑者のように家庭が崩壊した人たちもいる。名前を変え、地味に活動をしながら、実は米国では日本文化を使ってビジネスを広げていたことが明らかになっている。

 表向きはビジネスであっても、裏ではあまり語られない事実がある。宗教団体が絡んでいるのも、その1つだ。事実の中に、苦しめられている人がいるようなストーリーがあれば、いろいろな形で物議になる。ビジネスパーソンもそのあたりのことは、慎重になる必要があるかもしれない。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。

Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル


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