というのも、実はコロナ前、日本のインバウンドの現場でも「路上イベントは地域にとって百害あって一利なし」という問題がちょこちょこ起きていた。
例えば、ある商店街が主催している路上イベントもそうだ。これは「地域活性化」を目的として、主に住民や子ども連れを対象にして始められたもので、仮装をして街をみんなで練り歩くというシンプルなものだ。参加費はわずか1000円程度で、運営は商店街の有志で行っていた。
しかし、ひょんなことから訪日観光スポットとして持ち上げられてしまった。その仮装というのが、外国人がイメージする「日本の伝統」にピッタリだったということで、海外メディアに「日本に行ったら絶対に体験すべき」なんて感じで取り上げられたのだ。
かくしてインバウンドの盛り上がりとともに、外国人観光客が大挙として押し寄せるようになった。外国人からすればわずか1000円で、日本の伝統体験ができるのはお得だ。
この人気ぶりを日本のマスコミは「日本の伝統を外国人が称賛!」「インバウンドが大盛り上がり」と大ハシャギで取り上げたが、実は商店街はかなり複雑だった。
外国人観光客は確かにその商店街に大挙して押し寄せた。しかし、彼らの目的はあくまで「オリエンタルな仮装で街を練り歩く日本人を見物しながら、自分も参加する」ということなので、商店街で買い物をするわけでもなく、飲食店を利用するわけでもない。
仮装行列が終われば「ああ、楽しかった」と次の観光スポットへ移動したり、ホテルに帰ってしまう。渋谷ハロウィーンと同じく「メイン会場」はあくまで「路上」なので、地域にカネが落ちないのだ。
むしろ、マイナスのほうが大きい。外国人観光客が期待に目を輝かせて押し寄せてくるので、商店街の皆さんは店を早仕舞いして対応に当たらないといけなくなった。自分たちの稼ぎを減らしながら、外国人観光客の「おもてなし」をする、というなんとも本末転倒なことになってしまったのだ。
そこに加えて、観光客が増えれば当然、その中にはマナーの悪い人もいるので、ゴミの後始末などの作業も以前より増えたのである。
つまり、渋谷センター商店街振興組合理事長がおっしゃっていたような「マイナスの経済効果しかない」という状態に陥ってしまっていたのだ。
コロナの感染が広がる前、日本中がインバウンドで浮かれていたが、こういう「見物無料の路上イベントで地域にカネが落ちない」問題がいたるところで噴出していた。渋谷ハロウィーンはその象徴的なイベントだった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング