新車が売れない時代に出口はあるか?:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/3 ページ)
今の日本は新車が売れていない。そんな中で消費税率が引き上げられれば、自動車業界はちょっとしたパニックに陥る可能性がある――。
台数減、利益率減の中で
さてヒットモデルの話に戻る。はっきりしているのは、この先当分、大きいクルマが売れる時代ではないということだろう。日本の自動車に最も勢いがあった1980年代はカローラ、サニー、シビック、ファミリア、ミラージュと言った各社のCセグメントが売れていた上に、ひとつ上のDセグメントのコロナ、ブルーバード、アコード、カペラ、ギャランなども好調でだった。
現在これらCセグメント、Dセグメントは火が消えたような状態で、車種そのものが途絶えているケースも多い。ただし、CセグメントやDセグメントの燃費は大きく改善されており、ハイブリッドやディーゼルともなれば実効燃費で20キロくらい走るクルマも少なくない。実は既に大きなクルマが一概に燃費が悪いと言えなくなってきているのだが、実態と関係ないところで、もはや「大きいクルマに乗ることはアンチエコで、時代遅れ」という風潮になっている。そんな風潮と関係なくクルマにプレミアムを求め続ける層はもちろんいるが、残念ながら輸入車に流れるケースも多い。国内メーカーが利幅の大きいCセグとDセグを売ろうにも誰に向けてどんなクルマを作ったらいいのか分からず、具体的に打つ手が見えない状態が続いているのだ。
その結果、かつてのC、Dセグメントのユーザーのかなりの数がヴィッツ、フィット、デミオあたりのBセグメントに下りてくる。こうしたダウングレードの顧客には、小型車が宿命的に持つ貧乏臭さをどう払拭するかが鍵となる。
逆に、軽自動車から上がってくる層もいる。実際、トヨタは軽から移行する層にぶつけるために通常のBセグメントより小さいパッソをモデルチェンジして備えを固めた。こうした層に対しては、軽自動車でなくBセグメントを選ぶだけの理由が必要だ。しかしながら問題はこのクラスのクルマは利益率が低い。台数的に縮小、利幅も減るのではメーカー各社の決算への影響が避けられなくなるだろう。
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