デジタル化で“生き生き”接客 町のクルマ屋さんの事例:目的の共有がカギ(2/3 ページ)
デジタルテクノロジーをうまく使いこなせば、業務を効率化し、サービスを向上させることができる。しかし、導入しただけで全てがうまくいくわけではない。大切なのは、明確な目的と、その目的を会社全体に浸透させることだ。埼玉県で自動車整備などを手掛ける杉戸自動車の場合は……。
社員と目的を共有
自分が普段から通っている店でも、免許を取ったばかりの娘が代わりに来店したら、すぐに認識してもらえるだろうか? 代わりに来店したことを受付で説明する必要があるだろう。このシステムには、必要に応じて家族の情報なども登録できるため、本人以外が来店しても、スタッフが状況を察することができる。来店してからの接客や手続きがスムーズになり、まさに「かかりつけ」の店になれる。「ちょっとの差が大きい」と泰楽社長は強調する。
来店した時点で客の名前を呼べるというのは、社員にとっても安心材料になる。以前は、うまく応対できない若いスタッフが怒鳴られてしまったり、常連客に「社長と交代してくれ」と言われてしまったりすることも多かった。「接客が怖くなってしまう子もいた。そんな不幸な体験をできるだけ積ませないようにしたい」と泰楽社長は言う。
そういった目的を理解できても、行動に移すとなると難しい。泰楽社長は、若い社員らに対し、朝礼で「お客さまのため」「自分たちのため」という目的を繰り返し伝えることで、タブレット端末を使った接客を習慣にしようとした。成功体験を積んで自信を付けるため、ロールプレイングも実施した。また、日常から社員らの行動を見て「それはお客さまのためになる?」と問いかける。コミュニケーションを取りながら、自ら考える機会を与えている。
接客をよりよくする
タブレット端末のような大型の投資をしなくても、導入済みのシステムをカスタマイズすることによって業務を改善した例もある。
ミーティングや普段の会話でコミュニケーションを取るようにしていても、情報共有には課題があった。点検などのサービスが割引になるキャンペーンの情報を、若いスタッフが伝え忘れるミスがたびたび起こっていたのだ。そこで、見積もりや伝票作成をPCで行う際に、キャンペーン情報を自動で表示する機能を付けた。
目的は、「案内を漏らさないようにする」こと。接客の流れやスタッフの動き方を踏まえて、情報を確実に伝えるのに最適な表示方法とタイミングを検討した。泰楽社長は「サービス業だから、主役は『人』」と言い切る。スタッフと顧客が気持ちよく接するための改善だ。
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