ビル・ゲイツ、Visual Studio 2005のビジョンを語るVisual Studio Magazine

「シームレスコンピューティング」というテーマが、VS.NETにモバイルデバイスへの対応を迫り、Speech Server 2004のインテグレーションに圧力を加えている。Speech Server 2004は音声で動作させるアプリケーションの開発プロセスを大きく進歩させそうだ。

» 2004年06月15日 13時49分 公開
[Roger Jennings,FTPOnline]

FTP ONLINEビル・ゲイツ氏は2004年3月24日、サンフランシスコのモスコーセンターウェストで開催された「VSLive」、「Microsoft Mobile Developer Conference」、「Applied Voice Input/Output Society SpeechTek Spring 2004」の参加者を前に基調講演を行った。

 ここでゲイツ氏が取り上げたテーマは「シームレスコンピューティング」であり、アップグレードされたWindows Mobile 2003、新たにアナウンスされたSpeech Server 2004、そしてそれに対する、VS.NETに統合されたツールセットという3つの製品を強調するデベロッパー向けの性格が強いものとなった。基調講演では、デバイスの拡散、コードの品質とそのセキュリティ、接続性に関する標準ベースのWebサービスに注目していることなどにも言及した。

 披露された3つのデモのうち、最初に行われたのは、Visual Studio .NET 2005 Community Technical Preview(CTP)の新機能に関するもので、生産性の向上を目指すものであった。CTPは「Whidbey」として知られるVS.NET次期バージョンのセカンドプレビューで、製品版の出荷は2005年前半を予定している。

 デモでは、CTPでアップグレードされたDataConnectorツール(最初のテクニカルプレビューではDataContainer)を簡単な保険請求アプリケーションで紹介したが、DataConnectorツールは従来のDataSetsに加えて、ビジネスオブジェクトをデータソースとして利用可能にするものとなる。

 CTPがビジネスオブジェクトに対するXMLスキーマを自動的に構築することで、DataContainerはシングルクリックでその詳細を参照するためのGridViewおよびデータバインド型のテキストボックスを追加する。このサンプルは喝采を受けるはずが、聴衆は意外に静かだった。

 これ以外の生産性向上に関する拡張として、1行のコードでデータコネクションを作成可能なGenericが挙げられる。VB.NET-only My objectのメンバーは、カレントユーザーのWindowsアカウントのローカルコンピュータリソースとプロパティへのアクセスおよび、コモンタスクの実行に関する断片的なコードを提供する。

 最終的な製品では、500以上の断片的なコード(スニペッツ)とともに出荷される。このスニペッツが、.NET向けのWebサイトにおける主要なコード配布方式になるだろう。新しいException Assistantsが問題のあるコードの修正を示唆するが、これはあのOffice Assistantを思い出させる。

 ゲイツ氏はこうしたVS.NET 2005の新機能でコーディングの手間を50%削減すると主張しているが、これは「何と比較して?」という疑問が残る。ワンクリックで可能なWebディプロイメントにより、完成した.NETプロジェクトとそれに関連するものは、自動的に配布またはアップデートできるようになる。また、カンファレンスの参加者とMSDN Universalのサブスクライバーは、CTP bitsを受け取ることになる。

モバイルへの対応

 37社もの携帯端末ベンダーから提供される新しいデバイスと、50社のネットワークオペレーターからの出される要件に追従するためには、Windowsモバイルプラットフォームは少なくとも年に1度のアップグレードが必要だ。今回発表されたCTPには、スマートデバイス上で動作するアプリケーションの開発用としてCompact Framework 2.0が組み込まれる。

 また、Windows Mobile 2003では、VGAおよびQVGAディスプレイをサポートするほか、モトローラからリリースされた新しいMPxフォン向けに、ランドスケープからポートレートモードへの自動スクリーン切り替えなどがサポートされる。

 Microsoft Visual Studio for Deviceのデベロッパー部門グループプログラムマネージャ、Ori Amiga氏は、進化したモバイルコード開発の生産性を2番目のデモで証明した。わずか2行のVB.NETコードがビルトインカメラの表示を実現し、もう1行がMapPoint Location Services(MLS)へのコネクションWebサービスを実装するというものだが、これは2004年3月22日にMicrosoftからすでにアナウンスがあったものだ(参照:Introducing MapPoint Location Server)。

 MLSはネットワークオペレーターに依存することなく、モバイルユーザーの位置情報を獲得可能なWebサービスである。MLSは、地図やレストランガイドおよび、その他のサービスのような位置情報に依存したデータを配信するために、MapPoint Webサービスを統合する。MSDNのUniversalまたはProfessionalのサブスクライバーであれば、MSDN Subscriberダウンロードサイトで、MapPoint Web Servicesのスペシャルライセンスを申し込むことができる。

 このほかゲイツ氏は、モバイルアプリケーションの保証とマーケティングに関する、新しいMobile2Marketインセンティブと、4人の勝者に2万5000ドルが贈られるモバイルアプリケーションコンテストの開催を予定していることを明らかにした(関連リンク参照)。

音声合成技術

 ゲイツ氏は音声認識と音声合成を、Microsoftをはじめとする企業が、この数十年間に渡って追い求め続けてきた「聖杯」であると称した。初期のころは音声認識のエラー頻度が問題となっていたが、時間の経過とともにそれは急激に減少している。一般的な口述に対する音声認識は、大量の語彙および広範囲のトレーニングプロセス、そして許容し得るエラー率にするための大規模なアプリケーションを要求する。幸いなことに、簡単な語句であればQ&Aダイアログを使うことで、比較的低コストのスピーチランタイムでも、トレーニングを必要とせずに扱うことができるようになっている。

 Microsoft Speech Server (MSS) 2004のプログラムマネージャであるリチャード・アーヴィング氏は、最初のVB.NETのデモに関連した形で、音声インターフェースを備えたASP.NETアプリケーションの記述を実演した。同氏はDataTable Navigatorという、VS.NETツールにおける特定用途向けのコレクションのメンバを用いてダイアログを定義した。DataTable NavigatorはSpeech Application SDKで提供されるものである。

 同氏は続けて、合成もしくはあらかじめ用意された録音データによる質問に対して、許容できるユーザー反応を定義するためにGrammar Editorを使用した。ASP.NET上で実行するSpeech Serverシミュレーションをテストした後に、ネットワークで接続されたプロダクションサーバに対して、プロジェクトとして容易に展開可能となる。アーヴィング氏が語るこれらの話には説得力があったが、最後のデモは事前に用意されたものを動作させただけであった。

 またゲイツ氏は、現実のSpeech Serverアプリケーションについて説明を加えた。それはニューヨーク市の学校に通う生徒の父兄に対するものだ。このアプリケーションはPCを用いずに、父兄が自分の子供たちの学業やそれに関連した情報にアクセス可能にするものだ。ネットワークにつながっていれば利用可能で、特別な人員を配置する必要はない。

 Professional Developers Conference 2003でのWhidbey Technical Previewを用いて作業する開発者は、CTPにおける新機能が何かを理解するのに必要な情報を入手しておらず、また、Windows Mobile 2003 Second Editionのデモも新しい需要を喚起していなかった。しかしSpeech Server 2004は、音声で動作させるアプリケーションの開発プロセスに大きな進歩となる。そして、Longhornについては、ゲイツ氏が最後の余談として一度だけ話しただけだった。

執筆者について
 Roger Jennings氏はXML Webサービスとデータベースに関する、独立したデベロッパーであり執筆者である。また彼は、Visual Studio Magazineのコントリビューティングエディタ、FTPOnlineニューズレターのコラムニスト、OakLeaf XML Web servicesのサイト管理者でもある。彼のOakLeaf U.S. CRF(Code of Federal Regulations) Webサービスは、2001 Microsoft .NET Best Awardのホリゾンタルソリューション部門で最優秀賞となった。同氏へのコンタクトはroger_jennings@compuserve.comまで。

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