SAPアーキテクチャの鍵は「変化対応力」とSAPジャパンの玉木氏

SAPジャパンは年次イベント「SAP SAPPHIRE 2004」を2日間の予定で開幕した

» 2004年06月18日 01時52分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 SAPジャパンは6月17日、東京国際フォーラムにおいて、年次イベント「SAP SAPPHIRE 2004」を2日間の予定で開幕した。初日の最初のセッションには、同社バイスプレジデント、マーケティングソリューション統括本部長を務める玉木一郎氏が登場、NetWeaver以後、さらに複雑になったと言われるSAPのアーキテクチャについて、さまざまな表現を交えながら来場者に説明した。

 「ITシステムの拡張の最適化は都市計画に通じる」と話す同氏。例えば、戦後の都市計画では、子育て若夫婦が居住し、ショッピングなどをすることを想定したニュータウンが建設された。しかし、年月が経つにつれて、中心世代は高齢化し、街の設計と住人の間にミスマッチが生まれ始めた。多くの人が徒歩でショッピングセンターを訪れることが難しくなり、しだいに街全体がスラム化していく。この問題への「ソリューション」の1つは、たとえば、狭い道幅でも通行可能なコミュニティバスの導入により、ショッピングセンターへの足を確保することだった。

 情報システムに置き換えると、過去のある時点での業務要件やビジネスプロセスに最適化したITインフラは、時代の流れとともに必ず陳腐化していくことを示している。同氏は、企業がITを設計する際には、「複雑さを受容し、構造変化を視野に入れるべき」と話す。システムを構成するオブジェクト間を疎結合の状態に保ち、構造の変化に対しては、既存のブロックを最新版に置き換えるイメージで対応する。それが、SAPが提唱するNetWeaverのコンセプトと言っていい。

 NetWeaverは、ERP、CRM、SCM、PLM、SRMなど、同社の主要アプリケーションをユーザーが横断的に運用できるようにするために、「人、情報、プロセス、アプリケーションプラットフォームを統合する基盤」として位置づけられており、同社は、「サービス指向でアプリケーションを提供する」と繰り返す。

 ここで、サービス志向という場合、顧客企業の業務的な課題を解決するための青写真「エンタープライズ・サービス・アーキテクチャ」(ESA)が前提となる。ESAでは、基本的なオブジェクトから、ビジネスプロセスを切り離すことができる。そのため、業務システムはWebサービスやオープン技術で連携する「サービス」として導入できる。これにより、システムの複雑性が隠蔽され、社内外を含めた異種システムが混在していても、柔軟で拡張性のある環境を実現できる。

 玉木氏の講演では、「Flexibility」「Composite」「Reduce TCO」「Innovate」という4つのキーワードが示された。

Flexibility

 Flexibility。柔軟性は、NetWeaverが最も存在価値を出す分野。企業には、ERP(社内)、CRM(社内)、SRM(社内)、ERP(サプライヤー)、CRM(サプライヤー)、SRM(サプライヤー)、一括決済システム(アウトソース)など、さまざまなシステムが混在している。

 その上で、購買部門、生産部門、経理部門、さらに顧客企業といったシステムのユーザーが、複雑に絡まったスパゲッティ状のシステムにおいて、自らにとって必要なビジネスプロセスをそれぞれ構築している。したがって、これらのシステム的な状況が全社的な視点から鳥瞰図的に把握されているケースは極めて少ないという。

 NetWeaverはこうした多数のシステムを隠蔽する統一的なレイヤーとして機能する。これにより、例えば、調達業務において、「顧客のデータを参照する」「社内のCRMシステムと連携する」というように、方法が変更になったとしても、各システムの細かなプログラムの「闇」に頭を突っ込む必要はなく、NetWeaver上で、設定を変更する要領で対応できる。

 別の例では、プロジェクト管理も挙げられた。システムが疎結合である特徴を生かし、複数のプロジェクトを全社的観点でモニタリングする仕組みも、設定で構築することができる。

 「すべてのプロジェクトを詳細に把握できている企業は少ない。これができれば、不採算プロジェクトの早期発見など、プロジェクトの統廃合を全社的視点から最適化できる」(玉木氏)

Composite Application

 調査会社のガートナーによると、コンポジットアプリケーションは「古いシステムを賢い方法で再利用することによって、新しいシステムを構築すること」となる。

 SAPのアプローチでは、ビジネスプロセス、画面構成要素、エンタープライズサービス、ビジネスコンテンツの4つで構成される。Webサービスを採用することで、異種環境における技術的な差異を隠蔽し、自社と顧客企業間での相互運用性を確保する。

 これにより、異種環境をまたがって自社のシステムを作り変え、人、情報、プロセスを統合したサービス指向アーキテクチャをベースにしたアプリケーションを構築することができるとしている。

 また、R/3とmySAP Business Suiteの違いでもあるが、インタフェースにポータルを採用している点も、SAPのアーキテクチャで構築したアプリケーションの特徴になる。ポータルを採用することで、システム自体に詳しくないユーザーも、システムの複雑性を考えることなく直感的に利用できる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ