Lotus Notesからの移行を考える第十一回(2/2 ページ)

» 2004年07月20日 14時00分 公開
[吉川 幸比古,ITmedia]
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 次にNotesの運用を行っている社内情報システム部門の視点で考えてみる。

 前述したように、Notesの初期導入時期にはサーバーの分散配置が是とされたが、これは現在の経営環境では、逆に情報インフラの維持コスト増大の要因となっている。またNotesはこれまで定期的にバージョンアップを繰り返してきたが、このバージョンアップに伴うライセンスの追加購入費の負担も重くのしかかってきている。いくつかの企業ではすでにNotesサーバの集約化を実施し、サーバの管理コストとサーバ分のライセンスの削減施策を実施済みという。

 社内外の他のシステムとの連携の難しさも大きな課題となってきている。前述したように社内ネットワーク帯域の拡大にともない、社内の情報インフラはここ数年で急激に整備されてきている。そして今度は、乱立化といえるまでに増えたこの各情報システムを統合していくとこが、最近の情報システム部門の大きな課題となっている。

 初期にNotesを社内の標準基盤とした企業の中には、Notesのインタフェースを全社情報基盤のプラットフォームとして、その上にワークフローシステムを構築、社内の他のシステムへの入り口もすべてNotesのデスクトップとしている場合も多い。

 ところがNotesでは、バージョンアップの度にAPIや基盤の環境が変更となるため、こういったシステムの作り込みを行った企業はその都度Notes上のシステムの修正に多大な労力とコストをかけることになった。Notesがバージョンアップする際は、基本的には上位互換が唱えられる。しかしながら、社内に対して共通的な基盤として提供を行っている情報システム部門の立場としては、コンセプトの変更による大きな修正から、バグ修正などの細かい部分までをすべてテストし直す必要があり、このコストは膨大なものになる。

図2■Notesをインタフェースにすると、システム拡張の都度に、作りこみが発生する。

 さらに独自アーキテクチャーのために、こういった開発には専任要員やスキルが必要であるが、この人員確保やコストも今後の問題となる可能性が高い。Notesというローカルな技術に精通した人材を大量に養成し継続して確保し続ける余裕のある開発会社は今後少なくなるであろうし、現在そういったスキルを持っている要員についても、今後の時間経過とともにその人件費は上昇すると推測される。

 現在IBMが示しているNotesのJ2EE環境への移行となると、こういった開発要員の確保問題は解決される反面、基盤部分の全面刷新によって今までに構築した作り込みの部分を移管するためのコストは相当なものとなることが予想される。

Notesからの脱却

 上記のような課題を解決するために、企業における情報システム部門が今後とるべき施策はどのようなものだろうか?

 ローカルで融通性に乏しいNotesプラットフォームに見切りをつけ、オープンで拡張性の高い環境への移行ステップを本気で考える時期が来たのではないだろうか。すなわち、Webサーバとブラウザを中核としたWebアプリケーションプラットフォームへの移行である。インターネットで培われたオープンな技術をベースに、企業情報ポータルを窓口とした拡張性に富んだ柔軟なシステム構造が今後の標準的な社内インフラの姿であろう。

 当連載で紹介してきたようにMicrosoft Office SharePoint Portal Server 2003(以下、SPS)で構築できる企業ポータルは、ワークグループ間において情報共有の仕組みを簡単に構築・変更でき、すぐにでも情報共有やコラボレーションを開始することができる。Active Directoryと密接に連携した高度で柔軟なユーザ管理とセキュリティ設定や強力な検索機能など、魅力的な機能を数多く取りそろえている。

 現在も多くの企業で使われているNotesであるが、その中で最も大きな割合を占めるのは、Notesデータベースの基本的なテンプレートを利用した掲示板や文書ライブラリといった、特定のワークグループ間での情報共有を目的としたものである。このようなフォームや情報共有を目的としたデータベースは、SPSへの移行も手軽であり、明日からでもブラウザだけで、簡単に情報共有や発信を行える環境が実現できる。

 ただしその際に、今までNotes環境で蓄積されたデータやノウハウをすべて捨てて新環境へ移ることはナンセンスである。Notes上に構築されたワークフローなど、基幹業務プロセス部分のWebアプリケーションによる再構築が進むまでは、Notesはしばらくはデータストレージとしての役割を担い、その後緩やかに役割を終えることになるだろう。

図3■IBM自身が提唱しているNotesを使った3層デザインでは限界に達している。

 マイクロソフトでは、企業情報ポータル構築基盤であるSPSをはじめとして具体的にNotes環境のユーザの移行先のプラットフォームおよびその移行作業に必要な各種ツールの提供を行っている。当連載の最終回となる次回では、それらのツールの紹介と解説を行う予定である。

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