パートナーの質問攻めを食らうMSのバルマーCEO

Microsoft CRMのボリュームライセンス移行に不満を訴え、SAPとの合併交渉に動揺するパートナーからの質問に情熱的に答えたスティーブ・バルマーCEO。喝さいを呼んだ場面もあったが……。(IDG)

» 2004年07月14日 12時36分 公開
[IDG Japan]
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 Microsoftのスティーブ・バルマーCEO(最高経営責任者)は7月13日朝、トレードマークのエネルギッシュなスタイルでパートナー各社を元気づけた。だが、すべてのパートナーが同氏から望むものを得られたわけではなかった。

 「Microsoftの歴史において、特に素晴らしいと思われる時期をわれわれはともに過ごしてきた。最も重要な人々、つまりあなた方パートナーの優れた仕事ぶりに感謝したい」とバルマー氏はカナダのトロントで開催の第2回Worldwide Partner Conference最終日にステージに立ち、パートナー各社にエールを送った。

 同氏は3社のMicrosoftパートナーを壇上に上げ、また同カンファレンスのサイトを介して寄せられた辛らつな質問に答えた。パートナー各社はMicrosoftのサービス提供計画、Microsoft Business Solutions(MBS)部門への取り組み、Linuxとの競争、販売に際しての実際的な問題などについての質問を同氏に浴びせた。

 Microsoftは今週、サービスの刷新と拡大を発表した(7月12日の記事参照)。パートナーにとってサービス事業は生計手段であるため、バルマー氏には「Microsoftはサービス強化により(パートナーと)競争するつもりなのか」という質問が向けられた。

 「当社はサービス事業には従事しない。さまざまな顧客とパートナーが技術的な要素を取り入れられることは重要だと思っている。当社はたまたまそうした要素の一部に課金しており、それが(Microsoftコンサルティングサービスの)すべてだ。当社がもしもサービス事業に踏み込むとしたら、これとはまったく違ったやり方をするだろう」(同氏)

 MBSのERP、サプライチェーン、CRM製品を販売しているパートナーは、今でも6月に公表されたMicrosoftとERP大手のSAPとの合併交渉に(合併しないという決定が下されたにもかかわらず)動揺していた。

 「この交渉に関しては、当社がいると思われる位置、そしてミッドマーケット・スモールビジネスにおけるMBSの取り組みに対して私が持っている熱意を何ら減じるものではない。この(MBSの)戦略が気に入らないからSAPにアプローチしたわけではない。当社はこの戦略を気に入っている」(バルマー氏)

 また、Microsoftは先に「Microsoft CRM」をボリュームライセンスプログラムに移行し、その前払い料金からパートナーに支払うマージンを削減するとの決定を下して非難を浴びた。あるパートナーはバルマー氏に、この決定を撤回するよう求めた。

 「それはできない」と同氏は答え、Microsoft CRMをボリュームライセンスプログラムに移行したのは、Microsoftパートナーを呼ばずに、自分でこの製品をインストールしたいという顧客が多いからだと説明した。

 ERPとサプライチェーン製品はボリュームライセンスに移行しないと同氏は約束した。「当面はERPとサプライチェーンに関してこのようなことをする計画はない。これら製品はボリュームライセンスが適用されない、比較的狭い範囲の流通にとどまる」

 今回のパートナー会議のセッションの多くには、Linuxのマスコットであるペンギンが登場した。特にユーモアビデオの中では、Microsoft社員がペンギン型クッキーの頭をかじり取ったり、ペンギン型クッションに座ったり、クイーンの「ボヘミアンラプソディ」にのせてWindowsがLinuxに勝利すると歌っていた。

 パートナー各社はバルマー氏に、「Microsoft製品より安全で安く、優れている」と支持者に賞賛されているLinuxとどう戦うかを尋ねた。その答えは単純なものだった――「今、どこからもうけが出ているかを見ればいい」

 「今、ビジネスチャンスはどこにあるのか? サーバで大きなシェアを有しているのは、クライアントでほぼ全面的に顧客の支持を勝ち取っているのは何か? そこに疑問の余地があるだろうか」。バルマー氏の答えに、聴衆は笑いと喝さいを返した。

 同氏はまた、次世代版Windows「Longhorn」がもたらすビジネスチャンスを逃さないよう呼びかけつつも、投資計画は慎重に練らなくてはならず、今から始めるのは時期尚早かもしれないと忠告した。「スケジューリングがあまりうまくいっていないため、今日は最終的な出荷日を約束しない」

 Microsoftはクライアント版Longhornの出荷目標を、当初の計画より1年遅れの2006年に設定している。

 バルマー氏の熱意には興奮がわき起こったが、このイベントに参加した一部のパートナーは、具体的に自分たちの企業に関わる朗報がもっと聞けるものと期待していた。

 「Microsoft CRMの質問に対するバルマー氏の答え方が気に入らない」と話すのは、MBS製品を扱うUniOne Consultingの共同経営者セルソ・ソーザ・イスベルナー氏。「CRMのボリュームライセンスを提供し始めたMicrosoftのやり方には賛成できない」

 Messagewareのマーク・ロットマン社長は、従来からのインフラパートナーに関する話をバルマー氏からもっと聞きたかったとしている。MessagewareはMicrosoftの電子メールサーバソフト「Exchange」を強化する製品を販売している。

 「MBSが今年のナンバーワン(のテーマ)のように思える。もっとほかのことが聞きたかった。私の会社は水平インフラ企業だ」とロットマン氏。同氏は具体的には、自社製品の国際展開に関して、どうすればMicrosoftの注意をもっと引けるのかを知りたくて今回のイベントに参加した。

 Microsoftは次回のパートナー会議を、来年7月8〜10日に米ミネアポリスで開く予定だ。

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