IBM、「Linuxカーネルに特許攻撃はしない」と宣言

IBMは他社にもLinuxへの特許攻撃をしないよう呼びかけ、ITコミュニティーが一致団結して、特許侵害の主張を避け、そうした主張を解決する手続きを確立することを提案した。(IDG)

» 2004年08月06日 11時52分 公開
[IDG Japan]
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 IBMのテクノロジー・マーケティング担当上級副社長ニック・ドノフリオ氏は8月4日、LinuxWorldの基調講演で、IBMが自社の強力な特許ポートフォリオを使ってLinuxカーネルを攻撃することはないと保証し、他社に対してもそれに倣うよう強く呼びかけた。

 ドノフリオ氏の発言は、Open Source Risk Management(OSRM)が先日公表した、Linuxカーネルに影響する可能性のある特許に関する調査・分析結果に対するもの。これら特許の多くは、IBMなどLinux戦略を擁する大手企業数社の手にあることが判明している。

 「共同で革新を生み出すLinuxコミュニティーの活力を信じる同盟国として、われわれにはLinuxカーネルに対して特許を行使するつもりがないことを保証する。無論、自身を守らなくてはならない場合は別だが」(同氏)

 同氏は、ITコミュニティーが一致団結して、特許侵害の主張を避け、そうした主張があった場合に解決する手続きを確立することを提案した。

 「革新の構成要素を利用する人が増えれば、創造的なプロセスにさらに豊かな展望をもたらせる。オープン環境においてさまざまなあらゆる要素を組み合わせるときに、それ(特許の主張)はむしろ卑しい考えだ」(同氏)

 ドノフリオ氏は、共同開発による革新はITの将来において重要な役割を演じるようになり、Linux、各種のグリッド技術、インターネットはそこでも影響を及ぼし続けるだろうと話す。世界中の国家が、共同開発と知的財産の尊重のバランスを正しく釣り合わせる必要があるとも主張した。

 「IBMとしては、このバランスの確立を支援するためにできる限りの手を尽くすことを誓う」と同氏。

 オープンムーブメントにより、人々はさまざまな知的財産モデルを見直し、それぞれのユーザーに対してどこで最も価値を提供できるかを見直さざるを得なくなる。ドノフリオ氏は、この動きはソフト以外の多くの業界でも起きていると考えている。

 同氏は、このオープンムーブメント全体が活発な競争の継続を促し、可能にしていると主張、さらに政府機関と民間企業に、革新を奨励・支援する政策と慣行への取り組みを「共同で強化する」よう呼びかけた。

 「なぜ革新が重要なのか? 先ごろから議論の中心になっている、雇用拡大の問題を考えてみるといい」と同氏。

 同氏は、数年以内に約9100万の新たな雇用が発生するが、それがどの国で最も発生するかはまだ分からないとする最近の景気調査を引き合いに出した。

 「革新を生み出すための最も豊かな環境を整えた国に、多くのいい仕事が集まるというのは誰でも分かることだ」(ドノフリオ氏)

 同氏はそれから、Linuxとオープンソースコミュニティでは、技術が誰かにではなく全員に同時に所有されているため、目覚ましい革新を実現する可能性があると語った。

いまだにプロプライエタリなプラットフォームを支持している人々に対する大きなアドバンテージとなるのがこのコンセプトだという。

 「閉鎖的なやり方にしがみつく勢力は、革新を進めるのに何ら貢献していない。人々を閉じこめて、このように問題解決を妨げる人為的な壁を作れば、(革新的な)ソリューションを送り出すことはできない」とドノフリオ氏は語った。

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