ビジネスユーザー向けの新しいIM「InterComm」が登場

新興企業のFive Acrossが、企業ユーザー向けのIM製品「InterComm」を発表した。仕事を中断させることなくコミュニケーションや共同作業を実現するという。

» 2004年08月10日 16時05分 公開
[IDG Japan]
IDG

 新興企業のFive Acrossは8月9日、ビジネスユーザー向けのインスタントメッセージング(IM)製品を発表した。無料のコンシューマー向け公衆IMサービスや、高価なエンタープライズクラスのIMシステムに代わるものとして企業ユーザーに受け入れられると同社は期待する。

 Five AcrossのベーシックIMソフトウェアである「InterComm」は、同社のIMネットワークから無料でダウンロードして実行することができる。これは、コンシューマー向け公衆IMサービスのプロバイダー各社が採用している方式に近い。こういった公衆サービスとしては、America Onlineの「AIM」、Yahoo!の「Messenger」、Microsoftの「MSN Messenger」などがある。

 Five AcrossのIMソフトウェアの高機能版「InterComm Pro」は、より多くの機能を搭載し、価格は1エンドユーザーに付き29ドル。詳細は同社のサイトに掲載されている。

 Five Acrossのマーケティングディレクター、キャシー・エングラー氏は、「コンシューマー向けIMサービスが基本的に、ネットワーク環境につながった個人ユーザーが気軽に利用できるようにするのを目的としているのに対し、InterComm製品は、ビジネスユーザーがドキュメント上で共同作業をしたり、コミュニケーションを行ったり、ファイルを共有したりすることを可能にするためのワークグループ機能を多数備える」と説明する。

 同社幹部によると、コンシューマー向けサービスと対極に位置するエンタープライズ級のIMシステムは高価で、IT部門向けのセキュリティ機能やコンプライアンス(法令順守)機能を豊富に備えるが、ビジネスユーザー向けの機能が乏しいという。「職場でのインスタントメッセージングを再定義することがわれわれの役割だ」とエングラー氏は話す。同氏によると、再定義の柱となるのは、IMとワークグループ/コラボレーション機能の結合であり、Five Acrossが自社の手法を「ワークグループ・インスタントメッセージング」と呼んでいるのも、そのためだという。

 InterCommが備える主要なユーザー向け機能は以下の通りだ。

  • 複数の受信者にメッセージを送信する機能。一部の受信者がオフラインであっても送信可能
  • サーバベースのセントラルリポジトリ上でドキュメントを共有し、変更や改訂を管理する機能
  • オンライン予定表を共有して会議のスケジュールを作成する機能

 The Radicati Groupのアナリスト、ジェネル・ハング氏は、「InterCommは特定のニーズにフィットする製品だ」と話す。

 「これは、IMのプレゼンス機能をあらゆるものに連携させるエンタープライズ規模の大掛かりなコラボレーション製品ではない。特定の目的でIMの即時性が必要とされるプロジェクト向けの製品だ。ナレッジワーカーの中には、この製品が非常に役立つ人もいるだろう。これは必ずしも全社的に導入するようなものではなく、例えば、技術部門や人事部門といった特定グループを対象とした製品だと思う」(ハング氏)

 InterCommでは、ユーザーは仕事上の関係に基づいて通信相手をグループごとに分類したIMリストを作成する。InterCommユーザーの各グループは、ファイル、メモ、スケジュールなどの「資産」を保有し、グループのメンバーはサーバベースのセントラルリポジトリ上でこれらの資産を共有する。「InterCommでは、すべてがグループを中心として作成、組織される」とエングラー氏は話す。

 このアーキテクチャにより、ユーザーは例えば、いつでもその時点における自分の仕事の優先順位に基づいて、InterCommのIMシステム上で一部のグループに対してだけ自分をオンラインにして、ほかのグループに対してはオフラインであるように見せかける、といったことができる。

 「この機能は非常に重宝するだろう。というのも、職場でIMの魅力を損なっていた重要な問題として、業務の中断を前提としているということがあったからだ。もし私が明日発表するニュースレターを作成している最中に、だれかが来年のプロジェクトに関するIMを送信してきたら、非常に迷惑するだろう」とRadicatiのハング氏は話す。

 エングラー氏によると、時間帯の異なる場所にグループのメンバーが分散しているような場合などでは、メンバー全員がいつでも同時にオンラインになるという可能性が低いため、InterCommではメンバーがオンラインかオフラインであるかにかかわらず、すべてのメンバーにメッセージを送信することができる。オフラインのメンバーには電子メール経由でメッセージを送信する、ワイヤレスデバイスにテキストメッセージを送信する、あるいはIMシステムを通じて送信して、そのユーザーがログオンした時点でメッセージを受け取れるようにすることができるという。

 InterCommには「グループ投票」と呼ばれる機能もある。これは、メンバー全員に質問を提示し、可能な答えの選択肢のリストを複数回答形式で与えるという機能。Five Acrossによると、同じ質問を電子メールを通じて提示して回答者が答えを一から考えるよりも、このグループ投票方式の方が全員から回答が得られる確立が高いという。InterCommは、投票結果、メモおよび個々のIM対話をアーカイブ保存する機能も備える。

 IMコミュニケーションは、Five AcrossのIMネットワーク上、つまり企業のファイアウォールの外側で行われる。しかしエングラー氏によると、Five Acrossでは10〜12月期に、企業がファイアウォールの内側でIMコミュニケーションを運用するために、セキュリティを強化したサーバ製品を正式に発表する予定だという。

 IMコミュニケーションに関連したコンプライアンス問題については、「現時点では、そういった目的に応じたサードパーティー製品を購入する必要がある」とエングラー氏は話す。InterCommは音声カンファレンス機能やオンラインミーティング機能を装備していないが、これらの機能を追加することもあり得るという。ユーザーのフィードバックに基づいてInterCommを改善するのがFive Acrossの方針だ。「われわれはユーザーが望む方向に進むつもりだ」とエングラー氏。

 Radicatiのハング氏は、「Five Acrossは業務の中断という問題に着目してこの製品を開発した。ほかの機能はすべて、後から追加されるだろう。この製品に価値を見いだして利用する人もいるだろう」と話す。

 Five AcrossのWebサイトの情報によると、同社はカリフォルニア州パロアルトに本社を置き、2003年11月に設立された。創業者のグレン・リード氏はApple Computerの元社員。同氏はAppleでコンシューマーアプリケーションの開発ディレクターを務め、「iMovie」や「iPhoto」などの製品を担当した。リード氏のシステムプログラマーとしてのキャリアは、1985年にAdobe Systemsで始まった。Five Acrossは、Granite VenturesおよびAdobe Ventures(Adobe Systemsのベンチャー投資子会社)から出資を受けている。

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