Lotus Notes環境をSPSへ移行させるためのツール群第十二回(2/2 ページ)

» 2004年08月23日 16時00分 公開
[吉川 幸比古,ITmedia]
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移行手順の最初のステップは現状調査から

 Notesを利用しているユーザーが、既存のインフラを今後どうするかを検討するにあたり最初に行うべきことは何だろうか? それは、既存のNotes環境で利用しているデータベースを棚卸しての現状調査を行うことである。

 前回の連載で説明したように、Notesの環境では、サーバが分散配置されていることに加えユーザーが自由にデータベースを新規作成できるため、データベースが乱立化していく傾向にある。Notesユーザーの場合、企業の中に膨大なデータベースがあるとしても、実際に使われているデータベースは半分以下であることが多い。

 「Microsoft Application Reporter for Lotus Notes」を使うと、企業におけるNotesの利用状況がExcelのワークシートにレポート表示される(図1)。出力される情報は、ユーザーやサーバ、データベースの数、ファイルサイズといった基本情報について、1カ月、3カ月、6カ月、1年間の使用頻度の推移を表したデータである。さらにこの基本情報をもとにそれぞれのNotesデータベース毎の活用度を優良、標準、不良予備軍、不良の4段階に分類評価してくれる。ちなみに同社がApplication Reporterの開発段階でNotesユーザー5社においてテストしたところ、Notes活用度平均値は36%、過去3カ月で一度も参照されなかったNotesアプリケーションは平均で全体の55.7%、過去1年で一度も参照されなかったNotesアプリケーションは平均で全体の40.7%という参考値を得ている。噂にたがわず、使われていないNotesのデータベースは多いようである。

 Application Reporter はマイクロソフトのサイトから無償でダウンロードでき、以上のような調査をたった3クリックで実施でき、しかもこの調査は既存のNotes環境には一切の影響を与えることなく実施できる。

 またマイクロソフトでは現在「Notes無償診断サービス」の提供も行っている。これは、ユーザーがApplication Reporterを使って作成したデータをNotes診断サービス事務局に送付すると、専門の調査会社とマイクロソフトが、個別にNotesアプリケーションの棚卸し(分類)と移行に関するアセスメントレポートを作成してくれるというものである。

 ちなみにこの現状調査の作業は、NotesからSPSへの移行を決めたユーザーでなくても活用できる。マイクロソフトでは、現在のNotesユーザーが今後に採りうる方向として、1)Notes/Domino環境の維持、2)IBMの提唱するWorkplaceへの移行、3)他プラットフォームへの移行、の3つの方法があるとしている。しかし、いずれのケースにおいても現在のNotesサーバ上で運営されている資産については、何らかの移行やコンバージョンを行う必要があり、このためにもこの現状調査のステップは欠かせない手順である。Notesを大量導入しその運用に頭を悩ませているシステム管理者には、ぜひ一度Application Reporterを使って自社のNotes資産の棚卸しと現状把握を行うことをおすすめする。

図1■Microsoft Application Reporter for Lotus Notesによって出力されるレポート。

Notesデータベースの移行方針の検討

 さて現状の資産の棚卸しが完了した後に、今度は実際にNotes上の各データベースを具体的にどう移管するかを検討することになる。企業におけるNotesの利用形態はさまざまであるが、まずは移行対象となるNotesのデータベースをいくつかに分類する。

  • Notesのテンプレートをほぼそのまま、あるいは些細なカスタマイズを行っただけのもの
  • ユーザーの手作りではあるがアドホックな情報公開や共有を目的とした簡易なアプリケーション
  • Notesのアプリケーション開発機能を使って作りこみを行ったもの
  • 外部のアドインやツールを使ってNotes上に構築を行ったシステム

 このうち上2つのデータベースについては、比較的簡単にSPS環境への移行が実現できる。

簡易なNotesデータベースはSharePoint Converterを使ってそのまま移行

 マイクロソフトは、現在無償のツールである「SharePoint Converter for Lotus Notes」の提供を行っている。このSharePoint Converterは、部門ごとのNotesサーバに分散構築されたデータベースを、企業ポータルへ統合し一元管理するためのツールである。

 SharePoint Converterを使うことで、Notesで構築された掲示板やディスカッションなどの難易度の低いアプリケーションをSharePointテクノロジーベースのポータルサイト(SharePoint Portal Server)やチームWebサイト(Windows SharePoint Services)に容易に移行可能となる。これにより、分散した情報を統合して一元的なアクセス方法を提供し、部門や組織の境界を超えた共有と活用を推進することが可能となる。

 現在提供されているSharePoint Converterは「第1版」であり、「掲示板」や「お知らせ」といったNotesアプリケーションをSharePointのリストやディスカッションに移行する。ノーツのフォームにワープロや表計算などのファイルが添付されている場合は、リストデータの添付ファイルとして移行されることになる。今後リリースされる「第2版」では、これに加えて、SharePointドキュメントライブラリへの移行が可能となる。

図2■SharePoint Converter for Lotus NotesによるNotesアプリケーション移行のイメージ。

 膨大なNotesのデータベースとサーバの管理に日々忙殺されているユーザーにとって、マイクロソフトのこういった手厚いツールの提供は福音となるのではないだろうか? また、当然ながら、情報の内容によっては移行せずに現状のまま保管したい場合もあるかもしれない。その場合は、SharePoint Portal Serverの統合機能を利用して、情報の保存場所は従来どおりノーツデータベースを利用し、情報へのアクセスや活用はポータルから行うことも可能だ。つまり、SharePointは情報の種類や活用のされ方により、移行と統合の2つのオプションをノーツユーザーに提供している。今後の情報活用プランに合わせて、移移行と共存および統合のいずれかを選択できることになる。悩める情報システム部門の管理者は、ぜひこの機会にNotesインフラの今後について、じっくりと考えてみる機会を設けていただきたい。

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