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2004/08/31 23:33 更新


マニラに集積するトレンドマイクロの知能――Trend Labs

東南アジア特有の湿った熱気に包まれるフィリピンの首都マニラ。この地にトレンドマイクロのウイルス解析力が集積されている。ウイルス解析の戦場は意外にも和やかな雰囲気を漂わせていた。

 東南アジア特有の湿った熱気に包まれるフィリピンの首都マニラ。米軍が払い下げた軍用のジープを改造して作られた派手な乗り合いバス「ジープニー」が街の活気を感じさせる。スラム街が広がる一方で、中心部に近づくにつれ高層ビルが林立し、貧困と富が背中合わせになった不思議な魅力を持つ都市だ。

ケソンシティ

開発が進むケソンシティ


 メトロマニラと呼ばれる首都圏を形成する一角ケソンシティは、今急ピッチで都市開発が進む地域。アジアに強力な勢力を築いたセキュリティソフトウェア企業、トレンドマイクロは1998年の4月、このケソンシティにワールドワイドのウイルス解析を一手に引き受ける「Trend Labs」を設立した。

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 交通や電気、通信など社会インフラが未熟という事情はあるものの、コンピュータサイエンスを学べる大学が複数存在し、米国よりも20%も安い賃金でネイティブに英語を話すエンジニアが得られるマニラのメリットは、同社にとって魅力的な環境だった。開発拠点を持つ台湾へ地理的に近い点もここを選択する理由となったようだ。

 設立当時からTrend Labsに勤め、現在はシニアアンチウイルスコンサルタントを務めるジェイミ・リンドン・ヤネザ氏は、インフラの弱さを克服するため、自家発電装置を備え、ネットワーク環境はハイスピードのIP-VPN/インターネット/ISDNと3重にし、電話回線に関してもMCI、PLDTと2つの電話会社のラインを引いておりインフラの問題はないと説明する。交通の利便性を高めるためには、シャトルバスやタクシーのピックアップサービスを利用できる体制まで整えた。

ヤネザ氏

ラボを案内してくれたシニアアンチウイルスコンサルタント勤めるジェイミ・リンドン・ヤネザ氏


 だが、この土地にウイルス解析総本山を置く何よりの決め手になったのは、フィリピン人のフレンドリーで忍耐強い気質だったというから驚く。ウイルス解析作業の一連の流れを手作業で行っているトレンドマイクロでは、パターンファイルを一刻も早くユーザーに届けるために、エンジニアの気質というのは非常に大切な要素になってくるようだ。

ラボの様子

ウイルス解析センターの様子


ラボの様子

壁には効率的にパターンファイルを作り出すための各人のシフト表が貼られている


 IBMプラザビルの1フロアを占めるウイルス解析センターには、エンジニアが効率的に解析からパターンファイルの作成、クオリティテストを行うために考え出された大きなシフト表が貼られており、アウトブレイクが発生すれば、チームリーダーの判断のもとにエンジニアが集中的にそれに対処する体制が瞬時にとられる。まさに、緊急時にコミュニケーション能力とチームワークがものを言う。フィリピン人の気質がこういった点で威力を発揮するのだ。

 訪れたこの日はちょうどラボのメンバーが誕生パーティを開く姿が見られた。毎月行われている定例イベントだというが、平均24〜5歳という若いエンジニアがまるで学生寮にいるごとくの関係を築いている。オフィスにはラボのメンバーで行った旅行写真が飾られているなど、それはここがウイルス解析の戦場かと思わせるほど和やかな雰囲気だ。

ウイルス解析

 現在は100人のウイルス解析のエンジニアがこのラボに所属しており、4チーム体制で2チームずつ9:00〜21:00、21:00〜9:00の2交代制で24時間365日ラボを稼動させる。

エンジニア

ウイルスを解析しているアナリスト


 ウイルスバスターから送られてくるパターンファイルは、すべてここで作成されている。日本の顧客からウイルスらしき検体が送られてくれば、まずは日本の解析チームがウイルスかどうかの一次判断を行い、その後マニラのTrend Labsに送られてきて詳しい解析が実施され、パターファイルとなって配信用のActive Updateサーバにアップされる流れ。

 同社は、プレミアムサービスでアウトブレイクから2時間以内に対策をを提供するサービスを提供しており、暫定版のバンデージパターンとイニシャルレポートを作成するまでは45分という速さを売りものにしている。「他社にないこのようなサービスが提供できるのも基本的にはTrend Labsの高い能力によって実現されている」と、シニアアンチウイルスコンサルタントのヤネザ氏は言う。

エンジニア養成大学「Trend Univiesity」

 ウイルス解析者を養成するため、トレンドマイクロは教育にも力を入れており、このラボにはTrend Univiesityと呼ばれるスクールが併設されている。

 もともとウイルス解析エンジニアの入社試験は100倍の倍率という難関にも関わらず、採用後に受けるTrend Univiesityの4カ月間研修で15回のテストに合格しなければならず、さらに2割程度が脱落するという厳しいもの。その後にも、アップグレードトレーニング、そして抜き打ちのテストが実施され、エンジニアのスキルを常に高めた状態に維持できる体制を整備している。

 現在ウイルス解析エンジニアの候補として100人がTrend Univiesityでトレーニングを受けている最中だという。

 平行してシステムによる解析からパターンファイルの作成などのプロセスを自動化するプロジェクトも現在進行しており、エンジニアのさらなる増強だけでなく、解析のスピードを速めていく考えだ。

[堀 哲也,ITmedia]

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