「XML Technologies: OASIS Open Office File Format」と題されたセッションでは、SunのTechnical Architect、Michael Brauer氏により、OpenOffice.orgのファイルフォーマットについてが解説された。OpenOffice.orgでは、そのファイルフォーマットにXMLを採用している。
文書ドキュメントや設定ファイルなどは、XMLをZipフォーマットで圧縮したものだ。なお、このファイルフォーマットは、OASISのOpen Office ファイルフォーマットとして標準化されている。OASISは、Eビジネスの情報交換のための標準技術を策定する非営利の国際コンソーシアムで、Open Office ファイルフォーマットは、その分科会によって標準化されている(関連リンク)。
カンファレンス会場では、ドイツ企業による展示会も行われた。ここでは、OpenOffice.orgとXML技術を提供する企業が展示を行っていた。
Sun、ドイツ支社の展示では、OpenOffice.orgの商用版「StarOffice」(国内では「StarSuite」)と、Sun Java Desktop System、そしてその3Dデスクトップ環境であるLooking Grassの展示を行っていた。ヨーロッパではStarOfficeの人気が高く、4000万人近くのユーザー数という。ブースでは、Sun Java Desktop Systemと共に、さらに人気を高めたいとコメントしていた。
.riess appricationsは、StarOffice/OpenOffice.orgのコンサルティング企業であり、マイクロソフトOfficeからの移行などをサポートしているという。
.riess appricationsからは興味深いコメントが聞けた。
1000台規模のデスクトップで、ファイルサーバに10万程度の文書ファイルがある場合でも、実際に調査してみると直近の呼び出し文書は20%程度だという。
その中で、マクロなどを使用していたためにStarOffice/OpenOffice.orgのファイルフォーマットに自動変換できないものは、実に8%に過ぎなかったそうだ。そのため、この規模の企業でも、Microsoft OfficeからStarOffice/OpenOffice.orgへの移行は、十分現実的なものになっていると語る。
Software AGは、XML技術を提供する企業であり、XMLサーバ「Tamino」を展示していた。
前述したように、OpenOffice.orgのファイルフォーマットはXMLである。このOpenOffice.org文書ファイルなどをTaminoで管理することで、ブラウザを介し、文書内の情報を参照できるという目的だ。また、文書を修正した場合でも、即サーバに情報反映が可能だという。
マイクロソフトのドイツ支社も展示を行っていた。取材を申し込んだところ、「今回は、コミュニティとユーザーに向けてのデモであり、ジャーナリストへのコメントは控えている」とのこと。展示内容は、Microsoft OfficeでもXML利用の文書管理が可能、というものだった。
今回のカンファレンスでは、各国のローカルコミュニティから多くの参加者が集った。
OpenOffice.orgで公式ビルドとして提供されているのは、英語版、日本語版など10カ国語。チェコのPavel Janik氏らは、そのほか66言語版のビルドを提供している。
ローカライズに必要な作業は、各国のローカルコミュニティによって行われている。これらのコミュニティは、Native-Langプロジェクト(以下、N-L)のサブプロジェクトというポジションだ。
「One and a half Years of the Japanese Community」と題されたセッションでは、Japanese N-Lプロジェクトの代表である中田真秀氏が日本のコミュニティ活動についてを報告した。
OpenOffice.org日本ユーザー会は、「Japanese N-L プロジェクト」を運用しており、その代表である中田氏は、本家OpenOffice.orgコミュニティで、日本からの貢献が効果的に反映されるよう積極的に活動している。
今回のセッションでは、日本語が持つ特徴を明らかにし、そのために本家OpenOffice.orgコミュニティで障害となる幾つかの点についてアピールした。また、日本での普及活動についても報告を行った。
「A Quality Official Localized Build」と題されたセッションでは、TranSwiftの平野一成氏が各国版の品質を高めるため、ローカルコミュニティにおけるコミュニケーションの必要性を解説した。翻訳家である平野氏は、本家OpenOffice.orgコミュニティ情報を日本に向け、積極的に紹介している(関連リンク)。
「Learn from the South African 11 language localisation experience」と題されたセッションでは、南アフリカのNPO団体Translate.org.zaのDirectorであるDwayne Bailey氏から、南アフリカの11言語のローカライズについてが発表された。Translate.org.zaでは、OpenOffice.orgだけでなくブラウザ「Mozilla」や統合デスクトップ環境「KDE」「GNOME」のローカライズを担っている。
このほかに、アイルランド、イタリア、ドイツ、リトアニア、アルゼバイジャン、ノルウェー、オランダ、カンボジアなどのローカルコミュニティから参加者があった。
このようなコンファレンスでは、普段はオンラインでしか接することができない人たちと実際に会うことができ、コミュニケーションができる。これは、今後のオンラインコミュニケーションも円滑にしていく効果があるだろう。いわば、国際的なオフ会でもある。
日本のITシステム開発企業Good-dayから参加していた前田青也社長は、次のように語っていた。
「多くの国際コンファレンスに参加してきたが、最新の情報を得られるというメリットだけでなく、実際に人と会うことで、そのソフトウェアの持つ勢いを評価できると考えている。また、今回は、OpenOffice.orgの成功事例が集まっていないという発展途上の現状を把握できた。それと同時に、自らも取り組むべきことがあると感じることができたカンファレンスだった」(前田氏)。
なお会期中には、ドキュメンタリー長編映画「Digital Tipping Point」の撮影隊が取材を行っていた。
「Tipping Point」(ティッピング ポイント)とは、爆発的な普及を迎えた時のドラマチックな瞬間を指すもの。この映画内では、オープンソースのティッピングポイントを捉えようと、スペインやブラジルの政府要人、ドイツのミュンヘン市長らのインタビューを行っていた。
カンファレンスでは、「The Digital Tipping Point: Marketing for the fun of it」と題されたセッションも行われ、制作者のひとりであるChristian J. Einfeldt氏により、映画の狙いが解説された。また、撮影済みのフィルムの一部も公開された。
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