サイボウズのキャンペーンで激化するグループウェア業界

サイボウズは10月4日、Notesなどのグループウエアからの乗換えを検討している企業を対象に「サイボウズ ガルーン」そのまま乗換えキャンペーンを実施することを発表した。この背景を探ってみよう。

» 2004年10月04日 16時42分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 サイボウズは10月4日、Notesや「サイボウズ Office/AG」シリーズなどのグループウエアからの乗換えを検討している企業を対象に「サイボウズ ガルーン」そのまま乗換えキャンペーンを実施することを発表した。

 同キャンペーンでは、情報共有化のコンサルティング会社、ブレインワークスの協力によって移行に伴う時間・金額をモデル化し、移行イメージを可視化できるソリューションを提供する。

 この時期にこのような発表をした理由はどこにあるか? 同社のこれまでと、ノーツとの関係を見ていこう。

ノーツユーザーからの乗り換え組を狙う競合他社

 1989年に登場したロータス・ノーツは、「ホワイトカラーの業務の効率化」という当時としては斬新なコンセプトで、日本市場にもあっという間に普及した。その後、ワークフローなどの機能や、基幹システムとの連携などの進化を遂げたが、その反面、バージョンアップにつれて構築・運用面での時間や費用の問題から、ユーザーには負担が増していた部分もあるのが事実だ。

 例えるなら、Notesは高性能のスポーツカーである。当然、使う側の能力も必要とされる。高性能者はメンテナンスも大変で、ちょっとした修正やカスタマイズにも大きな費用がかかる。それゆえ、他社では、メンテナンスの容易性、価格などを謳った製品でそのシェアを獲得しようとしている。

 たとえばマイクロソフトではNotes/Dominoのディレクトリ情報をActive Directoryに移行させるためのツール「Active Directory Converter for Lotus Notes」を無償で提供するとともに、ノーツ移行支援サイトをオープンしている。

 一方IBMでは、新バージョン6へ移行させるための各ツールを提供するとともに、アップデートのためのQ&Aをそろえた移行サービスを開始している。

 ノーツユーザーからの乗り換え組を狙った他社から狙われる立場にある日本IBMだが、現在広く使われているNotes R4.6のサポートを2005年1月末で終了すると発表していることが、この動きに拍車をかけているのだ。

第3勢力、サイボウズ

 そうした市場の第3勢力として中小企業を中心にシェアを持つのがサイボウズである。同社がこの市場に投入しているのがポータル型グループウェア「サイボウズ ガルーン」だ。

 さて、このサイボウズ、実は日本IBMと提携していた時期があった。2002年の5月に「ノーツがもう一度日本を救う会」なる集まりが立ち上がったが、それと同時期の2002年6月に、「サイボウズ ガルーン」に「Notes/Domino 6」との連携機能を付加するなど提携を発表している。

 このとき両社の思惑としては、データベースとなる機能に強みを持つストック型グループウェアのNotesと、スケジュールなど日常業務機能に強いフロー型グループウェアのサイボウズはお互いに補完関係にあるものとして、連携によって相互に売り上げ、シェアを伸ばしていくことができると判断したためだ。

 しかし、この目論見はもろくも崩れ去る。その理由としてはソリューション販売にまで昇華させることができなかったことと、2002年8月にノーツがIBMに吸収合併され、方針が変わったことなどが挙げられよう。

 提携は思ったとおりに運ばなかったが、サイボウズには追い風も吹いていた。サイボウズが行ったアンケートでは、Notesとの併用ではなく、サイボウズ製品に乗り換える選択を行った企業が増えているという。景気の問題もあろうが、ライセンスを2重に払うメリットを感じない企業が多い表れといえる。また、それまで部門単位で導入してきたものが、全社的に入れる数が上回ってきたのが最近の傾向だという。

 こうした状況から、サイボウズでは、Notesを購入している顧客の多くは、Notesの基本機能だけを利用しており、導入効果も限定的なものに留まっていると確信するに至り、Notesからの乗り換えを提案することに決めたのである。

 すでに伏線として、2004年5月には、Notesのデータを移行できる「サイボウズ ガルーン コンバータ for Lotus Notes」をリリースしている。しかし、ツールがあれば移行できるほど簡単なものではないことは明白だ。そこで、これまで培ったノウハウなどを伝えるために、今回のキャンペーンを行うことにしたのだ。

時期的には妥当

 今回のキャンペーンは2004年10月4日から2005年1月31日まで行われる(ただし、エントリーは12月末まで)。期間中は、全国10カ所で50回以上開催される乗り換えセミナーや、移行期間と料金の目安が把握できる「移行マニュアル」、そして毎週開催される「乗り換え相談会」などの施策がとられる。また期間中は製品価格が15%オフとなる。なお、同社では下期発掘案件目標の35%程度を同キャンペーンをきっかけにしたいとしている。また、下期クロージング目標は179件とのこと。

 時期的にこの時期のキャンペーンが妥当かどうかだが、前述のとおり、現在広く使われているNotes R4.6のサポートは2005年1月末で終了する。このため、既存のノーツユーザーは、今後どうするかの決断を迫られている。ここに対してアピールするには格好の時期だといえるだろう。

 激化するグループウェアシェア争いの覇権を握るのがどの企業になるか、興味深いところである。

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