「コペルニクスの地動説と同じ」── XMLでデータが主役にXML 2005 Report

ワシントンDCで「XML 2004」が本格開幕した。オープニングのキーノートにはIBM幹部や国土安全保障省のマネジャーが登場し、XMLによってクライアントサイドに革新が起こり、データこそが主役に躍り出ると話した。

» 2004年11月17日 12時58分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 ブッシュ米大統領再選後、ワシントンDCは早くも2期目の政権人事で慌しさを増し、現地の朝刊は一斉に国務長官をはじめとする主要閣僚の交代を伝えている。日本よりひと足先に晩秋を迎えた政治都市のホテルで「XML 2004」が本格開幕した。同カンファレンスの起源は1984年に始まったSGMLカンファレンスまで遡る。

 米国時間11月16日朝、オープニングのキーノートに登場したのは、IBMソフトウェア部門でエマージングインターネットテクノロジーを担当するロッド・スミス副社長。ボールルームに集まった約500人の参加者を前に「XMLはビジネス統合を簡素化するためのコアとなる」と話し、同社のミドルウェア製品群でXMLをネイティブサポートしていくことを強調した。

XMLがビジネス革新のカギを握るとIBMのスミス副社長

 IBMのエマージングインターネットテクノロジーグループでは、Java、XML、Webサービス、およびLinuxといった今後広範に採用されるだろう革新的な技術に取り組んでいる。標準化団体への積極的な参画やオープンソースコミュニティーへの貢献を通じて、技術革新を加速するほか、こうした技術を活用してシステムを開発する顧客やパートナーらには、「jStart」と呼ばれる技術支援プログラムを用意している。

 IBMでは、こうした活動を通じて得られたものを製品やサービスに生かし、さらにすそ野の広い顧客のe-ビジネス化を後押ししていく。スミス氏は、こうした好循環を「顧客志向のイノベーション」と表現する。

クライアントに革新がシフト

 しかし、こうしたイノベーションはこれまで主にミドルウェア分野で進み、逆にクライアントサイドは取り残されてきた感がある。スミス氏は、「今後、よりリッチな操作感に対する需要が高まるのに合わせ、イノベーションは“Active Web”技術にシフトしていく」とみる。

 これまでのWebコンピューティングがクライアントには単にHTMLを見せていたに過ぎなかったのに対して、データのXML化が進めば、すなわちコンピュータが理解できる形にデータが進化すれば、ユーザーは必要に応じてそれをさらに活用できる。いわゆるお仕着せのアプリケーションではなく、やりたいことが自由にできる「Do it Yourself」タイプのアプリケーションの登場だ。スクリプト言語に再び光が当てられており、それらを生かせば、Thinクライアントでありながらも、よりリッチな操作感が得られるはずだという。

 IBMでは、DB2のXMLネイティブサポートを進めており、現在ベータ段階にある。ステージでは、XMLでDB2に格納されたデータをXQueryで引き出すデモも行われた。

XMLに本腰を入れる米政府機関

 IBMのスミス氏に続いて国土安全保障省(DHS)のメタデータマネジャー、マイケル・ダコンタ氏が登場したように、政府機関がXMLに本腰を入れ始めたことが今回のXMLカンファレンスではよく分る。

 XMLやSemantic Webに関する著作もあるダコンタ氏は、テロ攻撃から国土を守ることを目的に設立された同省が、XMLを生かし、その人が望む情報を的確に提供でき、しかもそれに別の目的にも再利用できる情報システムの構築に取り組んでいることを紹介した。

 それはデータに意味を持たせることであり、かつてプログラミングコードの付属物だったようなデータとは大きく異なるものだ。ダコンタ氏は、オブジェクト指向プログラミングによって、データはコード並みに重要になったが、モデル駆動プログラミングの時代に入り、主客は逆転したと話す。

 また彼は、例えば、同じデータであっても人によってさまざまな意味を持つことから、データにこそさらにスマートさが盛り込まれていくべきだとする。

 「コペルニクスの地動説と同じことが起こる」とダコンタ氏。データこそが太陽であり、目的や人によってさまざまに異なるアプリケーションがその周囲を回り始めると彼はみる。

 データは中世をようやく抜け出し、ルネッサンス期を迎えるようとしている。

「XMLの列車は既に駅を出発した。あなたは乗っていますか?」とダコンタ氏は問い掛けた

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