富士通、日立製作所、およびNECの3社は、Webサービス市場の拡大を狙い、WS-Reliability実装の無償公開に踏み切った。日本の大手ITベンダーが本格的なオープンソース化に取り組むのは初めてという。
日本を代表するITベンダー3社がタッグを組み、共同開発したWebサービスソフトウェアのオープンソース化に踏み切った。
富士通、日立製作所、およびNECの3社は11月26日午前、「WS-Reliability」を実装したソフトウェアをオープンソース化したことを明らかにし、情報処理推進機構(IPA)サイトで無償公開を始めた。WS-Reliabilityは、3社が中心となってOASISで標準化を進めてきたWebサービス向けの高信頼メッセージング仕様。Webサービスにおける通信路の信頼性を保証するという極めて重要な技術を普及させるため、WS-Reliability仕様自体はもちろんのこと、同仕様を実装した「RM4GS」(Reliable Messaging for Grid Services)正式版もロイヤルティフリーで利用できるようにする道を選んだという。
3社は2003年1月、Sun MicrosystemsやOracleも巻き込んでドラフト仕様を公開、今月15日にはOASISが標準仕様として正式採用していた。なお今回、BSDライセンスをベースとしてオープンソース化されたRM4GSは、昨年7月から経済産業省が推進する「ビジネスグリッドコンピューティングプロジェクト」の一環として開発されたもの。今年3月からサンプルソフトウェアが公開されている。
Webサービスの技術というと、SOAP、WSDL、UDDIといった基本プロトコルやレジストリがよく知られているが、それ以外にもさまざまな領域(レイヤ)で標準化が進行中だ。中でも最も重要とみられているレイヤが、暗号化などを行うセキュリティサービスや、このメッセージングだ。
WS-Reliability仕様には、通信路の信頼性を保証する次のような3つの重要な機能が盛り込まれている。
このほか、ファイアウォールへの対応や、常時起動していないデスクトップPCを対象としたクライアント/サーバモデルへの対応が図られているのも特徴だ。
「信頼性を保証する標準が確立されていなかったため、企業はWebサービスで本格的なシステムを構築するのに対して二の足を踏んでいた」と話すのは、3社の取りまとめ役を務めてきた富士通ソフトウェア事業本部開発企画統括部の成田雅彦プロジェクト部長。
「本格的なシステムが安価に構築できるし、安心してWebサービス採用に踏み切れる」(成田氏)
緩やかなシステム間の連携を実現するWebサービスは一時の過剰な期待は消えたものの、むしろ、ここへきて重要な仕様の標準化が進み、本格的な普及期に差し掛かっている。日本の大手ITベンダーとしては初めてのケースともいえる実装のオープンソース化に踏み切った背景には、高信頼メッセージングが本格的なシステム連携の基盤となる技術であり、市場を拡大するには不可欠との判断があるという。
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