UNIX訴訟の合意内容が明らかに――SCO、苦境に

「Groklaw.net」というWebサイトに、SCOのLinuxに対する主張の根拠を危うくする文書が公表された。

» 2004年12月03日 11時42分 公開
[IDG Japan]
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 SCO Groupは「Linuxには違法なソースコードが含まれている」という主張を立証するのに、これまで考えられていた以上に苦労することになりそうだ。「Groklaw.net」というWebサイトに、同社の主張の根拠を危うくする文書が公表されたからだ。

 同サイトは今週、SCOが所有権を主張するUNIXのソースコードの大部分を再配布する権利を開発者に認めた10年前の訴訟和解の内容を初めて公開した。これにより、SCOと係争中のIBMの立場も強まる可能性がある。

 オープンソースの推進者で、Open Source Initiativeの創始者の一人でもあるブルース・ペレンス氏は、「この合意は人々がUNIXソフトウェアを再配布する権利を認めるものであり、これまでこのことは知られていなかった」と話す。

 「SCOが現在、所有権を主張しているUNIXソフトウェアの一部は、一般の人々がオープンソースとして配布できることが、これではっきりした」(ペレンス氏)

 ソフトウェア開発者の多くは、Berkeley Software Distribution(BSD)と呼ばれるUNIXの主要バージョンの1つを、Linux OSに含めて自由に再配布できると理解していたが、今回の発表はこういった条件を初めて公にする格好になった。

 この合意内容は、Groklawがカリフォルニア公文書法に基づいて入手したもので、この合意により、UNIXのソースコードの所有権をめぐって1990年代初頭にカリフォルニア大学とAT&Tの子会社Unix Systems Laboratories(USL)との間で起きていた長期紛争が決着した。

 ユタ州リンドンに本社を置くSCOはその後、USLのUNIX資産を買収した(同社がどの資産を所有しているかについては現在、裁判で争われている)。そしてSCOは、自社のソフトウェアがLinuxのソースコードに違法に複製されたと主張していた。さらに同社は、自社のUNIXソースコードから派生したソフトウェアをIBMがLinuxに提供したとして、巨大コンピュータ企業のIBMを相手取って数十億ドルの賠償金を求める訴訟を起こした。

 SCOは昨年12月、USLの和解合意に含まれるファイルの一部のリストを提出し、これらは「GPLの下でLinuxに含めて無制限に利用/配布することを意図あるいは許可したものではなかった」と主張している。

 しかし和解合意の内容は同社の主張と異なるようだ。和解条項によれば、問題のファイルは、著作権表示を含めるという条件で「自由に複製・再配布」してもよいとされている。

 Linux開発者らは、ファイルが複製されたというSCOの主張を否定している。

 シカゴにある法律事務所Kirkland Ellisで知的財産問題を担当するパートナー、ジェフ・ノーマン氏によると、SCOの主張が本当だとすれば、合意に含まれる著作権表記条項はLinux開発者にとって問題となる可能性があるという。問題のファイルが実際に複製されたのだとすれば、コードを追加した責任のある開発者は、著作権表示を含めなかったために「重大な」結果を招くかもしれない、とノーマン氏は指摘する。だが、そうだとしても、これは開発者の問題であり、Linuxユーザーの問題ではないという。

 しかしSCOの主張が立証されたとしても、それで同社が損害を被ったことを陪審員に納得させるのは難しそうだ。「ロイヤリティなしで自由に再配布できるコードに著作権表示を含めなかったことによって、SCOはどんな損害を被ったというのだろうか。損害を立証するだけの説得力がある議論は私には思いつかない」とノーマン氏は話す。

 広範な再配布が合意で認められているという事実は、ファイルに企業秘密が含まれているというSCOの従来の主張を維持するのも難しくするだろう、とノーマン氏は言う。

 「この問題は、これらのファイルに起因するあらゆることに関係する。USLがこのコードを配布することを許可し、それを使用した人を訴えるつもりはないとしたのであれば、そのコードはもはや秘密でも何でもない」(ノーマン氏)

 USLの訴訟にかかわったBSD開発者のカーク・マカシック氏によると、和解合意の発表は、10年前の合意がSCO自身にも適用されるのかという以前からの疑問にも答えるものだという。

 「この合意は、USLおよびカリフォルニア大学の後継者すべてに対して拘束力を持つ。つまり、この合意はSCOに対しても完全な効力を有するということだ」とマカシック氏は電子メール取材に答えている。

 マカシック氏によると、これは重要なポイントだという。というのは、USLの合意書の中で指定されたコードが、LinuxやBSDなどのソフトウェアに含めて自由に再配布できることが明白になったからだ。「BSDを使用している企業は、たとえSCOに訴えられても何も心配することはない」(同氏)

 ノーマン氏によると、合意の中で言及されていないSCOが、その条項に拘束されるかどうかという問題は議論の余地があるという。「たぶん拘束されると私は考えているが、議論の余地が全くないとは言えない」と同氏は話す。

 シカゴにあるDecatur Jonesの財務アナリスト、ディオン・コーネット氏によると、この合意は1994年の和解以降に書かれたコードには適用されないが、SCOの法的論拠の一部が崩れることは確かだという。

 「SCOにとっては、主張を立証するのが非常に難しくなるだろう。この合意によれば、彼らが著作権を主張しているコードの大部分がパブリックドメインに属するのは明らかだ」(コーネット氏)

 USLが自社のコードの配布方法に関して大幅に譲歩する形で訴訟を終わらせたことは、大きな問題をSCOに提起している、とコーネット氏は指摘する。

 「SCOは、決着がはっきりしているように見える訴訟を続けることで、単に歴史を繰り返そうとしているだけのだろうか。AT&Tの先例にならって、なにがしかの金を手に入れるつもりなのだろうか」(同氏)

 SCOはこの件に関するコメントを避けている。

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