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» 2005年03月07日 17時34分 公開

特集:オフショア開発のゆくえ:第1回 活発化する世界の「オフショア開発」

オフショア開発は企業のシステム開発にどのようなインパクトをもたらすのか。インドのTATA Consulancy Servicesにオフショア開発の市場動向について寄稿してもらう。

[TATA Consultancy Services]

 エンジニアの労働コストが低い国でシステム開発を行うオフショア開発が、企業の情報システム構築手法において無視できない存在になっている。主に、インドや中国、ロシアなどに専門企業がある。一方で、米国では、オフショア開発の利用によって、国内のIT技術者の労働機会が奪われていることが社会問題化しつつあるという現実もある。世界でも最大級のオフショア開発ベンダーの1つ、インドのTATA Consulancy Services(TCS)に市場動向などを寄稿してもらう。


オフショア開発とは?

 オフショア開発とは、ユーザー企業が本拠地を構える先進国ではなく、インドや中国など、IT人材が豊富で賃金水準が割安な国々のIT企業にソフトウェア開発などを委託することを指す。日本でも最近よく聞かれるようになったが、国境を越えたこの新しい形の委託開発は、欧米諸国ではすでに90年代初め頃から本格化し始め、21世紀に入って一つの潮流ともなっている。最近は委託開発の内容も、ソフトウェア開発からIT活用サービス(ITES)やBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)へと広がりを見せている。

 企業がシステム開発を外部のベンダーに委託する場合、当初は、ベンダー側の開発要員を顧客企業へ派遣する「オンサイト業務」が中心になる。だが、先進国の物価水準は高いため、オンサイト方式では派遣要員の滞在費などを含む人件費が割高になってしまい、途上国のIT技術者を活用するコストメリットは見込めない。

 そのため、プロジェクトに関する相互理解が進み、信頼関係が深まるにつれ、次第に人件費の低い途上国への業務の移管が加速していく。結果として、オンサイトから「オフショア開発」へと移っていくわけだ。オフショア方式の開発はオンサイトに比べて約30〜50%の費用で済むとも言われており、経費削減効果は大きい。

オフショア開発のメリット

 IT人材が大幅に不足する先進国のユーザー企業にとって、短納期への要請や品質の維持はますます強まっている。そして何よりも、膨れ上がるIT投資およびエンジニアの人件費を節約するために、IT人材が豊富で賃金が割安な途上国への業務委託は、1つの選択肢としては魅力的である。たとえば、インド人のIT技術者の人件費は、平均して米国人技術者の約5分の1である。

 実際、オフショア開発委託を早い時期から行ってきた一部の欧米企業は、大幅なコスト削減を実現して現在では高収益を達成している。TCSが委託を受けたある日系企業(米国法人)を例にとると、初年度ナレッジトランスファーなどを経て、2年目以降から大幅なIT経費削減を実現した(図1参照)。

 市場と技術の変化のスピードが速く、すべてのスキル・セットを自社内で維持することは困難で、専門性の高い外部IT企業を用途に応じてうまく活用すれば高効率な開発やサービスの提供が可能となるし、常に過剰人員を抱え込む必要がなくなる。

オフショア開発の委託先

 オフショア開発の有力な委託先として、インド、イスラエル、フィリピン、アイルランド、中国、ロシアなどが挙げられる。国境を越えての委託開発であるだけにさまざまなリスクが伴うのも事実であり、ベンダーを選定する際には委託先の国の事情についても充分把握すべきであろう。マクロ経済、法律(知的所有権保護など)、政情、立地条件、コミュニケーション(言語)、機密管理、インフラの状況、政策、教育水準、IT人材の厚みとスキルレベル、賃金水準などが選定の基準となる。

 調査会社ガートナーの総合評価では、最も有望な委託先と考えられているのがインドやアイルランドなどである。特にインドは、最近「世界のITサービスセンター」として急浮上している。またインドと同様に人口大国、IT人材大国である中国も、今後有力な委託先として存在感を増すと考えられる。

 オフショア開発委託は、国内での委託とは異なり、異文化理解や言語などの問題がネックとなって相互理解、信頼醸成には若干の時間がかかるかもしれない。しかし国境を越えた開発委託はますます加速化しているのが現実だ。グローバルな企業間競争は激化しており、企業競争力の創出・維持にとっては無視できない方法論である。調査会社ギガ・リサーチは、今後、世界のオフショア開発は年平均20%以上で成長し続けると予測している。

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