グループウェアの導入と運用管理にまつわるエトセトラグループウェア戦国絵巻(1/2 ページ)

今や中堅・中小企業ではグループウェアの導入がごく自然なこととして考えられるようになってきた。しかし、実際の導入にあたっては運用・管理面を慎重に検討すべきである。今回は、この点にスポットを当てていこう。

» 2005年04月12日 10時00分 公開
[ITmedia]

 社内の情報を共有し、効率的な情報の流れを作るためのツールであるグループウェアは、クライアント側の使い勝手にフォーカスが当てられる形で紹介されることが多い。もちろん利用してもらってはじめて効果が現れる製品なだけに、ユーザーインタフェースの作り込みなどが重要なポイントであることは否定しない。しかし、実際の導入にあたっては、既存のシステムとのスムーズな連携などを含め、運用・管理面を慎重に検討した上で導入するのが普通である。今回は、この点にスポットを当てつつグループウェアを考えていこう。

ASP型のサービスが人気の理由

 グループウェアに限らず、自社でサーバを運用することは、システムを比較的自由にデザインできるので基幹業務などでは当然そうすべきであるし、それらとの連携が必須な場合も自社内で運用・管理ができるほうが何かと都合がよい。反面、運用・管理での負担というのは覚悟しなければならない。

 社内の情報システム部門が充実している大企業ならいざ知らず、中堅・中小企業ではシステムの管理運用に十分なリソースが割かれていることはまれである。特に、人的なリソースに関しては期待できないことが多い。ハードウェアやOSのコストが人件費のコストを上回るのは、よっぽど大規模なシステムだけである。経営の観点からすると、ハードウェアやOSを導入するのはまだしも、人を新たに雇うとなると相応の効果が期待できなければ承認できないだろう。

 このため、中堅・中小企業でグループウェアの導入がボトムアップ、つまり従業員の要望で導入された場合、いわゆる「言い出しっぺ」がその管理・運用を命じられることも珍しくない。命じられた人間が本来の業務とは別の作業に忙殺されるであろうことを思うと同情を禁じ得ないが、それほど運用管理は手間がかかるし、本来かけなければならない作業である。

 そのような事情もあり、ASP型のサービスが人気を集めているのだが、これはグループウェアにおいても例外ではない。実際、グループウェアのホスティングサービスを提供している事業者はいくらでも見つけることができるし、サイボウズの「サイボウズ Office 6」(Office 6)もマイクロソフトの「Microsoft GroupBoard ワークスペース」(GroupBoard)もASP型のサービスを提供している。グローバルメディアオンライン(GMO)が提供しているXteamはGroupBoardを使ったASPサービスである。

 ASP型はサーバの管理を事業者に依存できるため、管理工数面のメリットが高いうえ、バックアップや障害対策もしっかり行われており、一般的には自社内でサーバを運用するのに比べ可用性が高くなることが多い。運用管理にあまりリソースを割けない中堅・中小企業に適した形態である。この特集ではサーバにインストールする形態を前提とするので、ASP型については掘り下げないが、積極的に検討しても良いだろう。

マルチプラットフォーム対応の意義

 社内ポリシーなどの問題で、ASP型のサービスを利用できないケースも考えられる。そうなると社内にサーバを設置することになるが、OSはどうすればよいだろう。ここで、サイボウズのメリットとして「マルチプラットフォーム対応」が挙げられることがあるが、これはあまり意味がない。

 Office 6は対応プラットフォームとして、Windows、Solaris、Linux、FreeBSDを選択可能である。一方GroupBoardは、Windows Server 2003またはWindows Small Business Server 2003を利用する。

 この話は、ともすればLinuxの普及と不自然に関連づけられ、Linuxをサポートしていることは中堅・中小企業にとってメリットのあることだ(だからサイボウズがいい)という安直な結論が導かれることもある。部分的には理解できる部分もあるが、このあたりはきちんと実情も考えていく必要がある。一例として、ノークリサーチという調査会社が先月公開した「中堅・中小企業における、IAサーバ導入の実態」というレポートを挙げよう。

 このレポートによると、すでにサポートが終了したWindows NTを今なお利用しているユーザーが2割以上いるという。このこと自体はそれほど驚くことでもないだろう。これらはいずれリプレイスせざるを得なくなるはずではあるが、安定して動いているものをわざわざリプレイスする意義を感じないユーザーの考えはよく理解できる。

 しかし、2005年は、2000年問題に対応すべく導入されたシステムの多くがリプレイスされる時期とされている。つまり、OSとハードウェアの両面でリプレイスをかける必要性が生じてきているわけで、OSだけであれば重い腰を上げなかったユーザーも、両方を思い切ってリプレイスしてくることが予想される。

 ただ、前述のように管理面での負担などを考えると、Windows NTのリプレイスでLinuxが選択されるかというとそれは考えにくく、結局のところ、Windows NTからWindows Server 2003への移行がメインストリームになるだろう。加えて、「グループウェアなどで社内のコミュニケーション強化」という導入要因があることを考慮すると、Windows NTからWindows Server 2003にOSをリプレイスし、かつグループウェアを導入する、というストーリーが予想できる。この点において、マルチプラットフォームに対応しているサイボウズのメリットはそれほどない。選択肢が用意されているのはいいことだが、「できる」と「すべき」はまったく違うものなのだ。

 では次にモバイル連携機能やカスタマイズ性について見ていこう

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