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» 2005年05月12日 03時22分 UPDATE

Inetrview:青野氏激白! サイボウズがMySQLを採用した理由

サイボウズがそれまでのプロプライエタリな姿勢から、MySQLの採用に踏み切った背景には何があるのか。サイボウズの代表取締役社長、青野慶久氏がその真意を語った。

[西尾泰三,ITmedia]

 独自のDB「CyDE」を捨て、MySQLの採用を発表したのが先月のこと(関連記事参照)。思えば、CyDEの登場から5年程度たっていた訳だが、次の5年をサイボウズはオープンソースに賭けた。その経緯と今後の指針をサイボウズの代表取締役社長、青野慶久氏に聞いた。

青野氏 最高の笑顔で「ナンバーワンポーズ」(青野氏命名)を特別に披露してくれた青野氏

ITmedia 先月、独自のデータベース「CyDE」を捨ててMySQLを採用した発表をされましたが、この経緯を教えてください。

青野 これは2年以上前から進めていた話です。2002年9月に中堅から大企業をターゲットとしたグループウェア「サイボウズ ガルーン」という製品を発売したのですが(関連記事参照)、CyDEを搭載していることは、ビジネス上非常に大きなネックがあることが分かりました。

 具体的には、やはりスケーラビリティが一番大きな問題でした。規模が大きな企業で扱うデータ量などをさばくのに、CyDEでは予想以上に厳しかったのです。また、クローズドなソフトであるが故の拡張性の低さも問題でした。CyDEは独自のスクリプトとC++で作っているのですが、システム・インテグレーターなどからカスタマイズの要望があってもそれに応えることができないというジレンマがありました。パートナー契約などを結んでいても、そうした独自の部分が多いことは、パートナーに余分な労力を強いることになり、現実的でない部分もあります。「やれる」と「できる」は違うのです。

 ガルーンが市場に投入されて半年もたっていない2003年初めには、この問題はさらに顕在化していました。ここで、わたしたちはガルーンの開発ラインを新しく1本作りました。こちらは中長期的な開発を行うためのプロジェクトで、こちらに優秀な開発メンバーを移し1から開発をスタートさせました。

ITmedia MySQLを採用しようと決めたのはいつごろですか?

青野 2003年の春にはもうMySQLに絞り込んでいました。最終的な候補としては、MySQLとBerkeley DBが挙がっていました。このうち、ライセンス周りで条件の良いMySQLを採用したのです。ライセンス周りはタフな交渉でしたが、最終的にわたしたちの配布しやすいパッケージ単位でのライセンスフィーで契約しました。

 PostgreSQLなどについては、動作の軽さなどを考慮した結果、早い段階で候補からは外れました。「少々機能が劣っていたとしても軽ければいいではないか」というサイボウズらしいノリが反映された結果がMySQLなのかもしれませんね(笑い)。

ITmedia 1から開発したという成果物が、「Azalea」というコードネームで開発され、6月30日に発売される「サイボウズ ガルーン2」(以下ガルーン2)なのですね。1から開発したということは、従来の製品とは開発言語からして違うのですか?

青野 そのとおりです。旧フレームワーク(CyDE)に対して、ガルーン2で採用している新しいフレームワーク(CyDE2)はまったく異なるものです(下図参照)。

旧フレームワーク(CyDE) 新フレームワーク(CyDE2)
コンセプト 軽量/高速 拡張性とスケーラビリティ
DB サイボウズ独自エンジン
・組み込み型
・オブジェクト指向DB

MySQL
・常駐型
・リレーショナルDB

Web技術 CGI(1サーバ型)

CGIまたはApacheモジュール
・三層構成可能

開発言語 独自スクリプトとC++ PHP4、Smarty、C/C++
国際化 Share360単独 フレームワーク標準

 これを見ていただければ分かると思いますが、新しいフレームワークではアプリケーションをPHPで記述しています。これもMySQLの採用と同じくらい大きな選択で、この部分をJavaにするかでも悩みました。

 新しいフレームワークですと、アプリケーションを開発するのに必要な知識は主にMySQLとPHPです。これはパートナーからするとCyDE2という土台の上でBlogなど各種アプリケーションを開発しやすくなります。

 極端な話をすると、CyDE2のフレームワーク上でアプリケーションが増えていくと、「サイボウズが提供するスケジューラ」より優れたアプリケーションが開発される可能性も出てきます。その意味では、サイボウズのビジネスが「グループウェア」ではなく「プラットフォーム」のほうにシフトしていくと言えます。いや、サイボウズのグループウェアも負けませんけどね(笑い)。

ITmedia 非常に思い切った決断ですね。従来のCyDEは捨てる、またはメンテナンスモードとでも言うべき状態になるのでしょうか?

青野 従来のCyDEはばっさりと捨てることになります。こうした決定に社内で混乱がなかったわけではありません。技術者に求められる言語がガラリと変わるのですから。ただ、すでに従来のCyDEの開発に携わっていた人間のほとんどはCyDE2の開発に移行させており、従来のCyDEには1人しか開発リソースを割いていません。

CyDE2への移行で懸念される問題

ITmedia MySQLは常駐する形ですか? CGIで動作していた従来のCyDEと比べてPHPあたりがボトルネックとなって全体的な速度が従来より遅くなる気がしますが?

青野 MySQLは常駐する形ですね。また、プログラムはPHPをCGIから呼び出すという形になりますが、ApacheのモジュールとすることでCGI以外の方法で呼び出すこともできます。基本はCGIからの呼び出しですが、このあたりは切り替え可能にしているので、案件ベースで変わっていくことになります。

 また、MySQLを採用したことで、いわゆる3層構成も可能となったので、数千人規模までの提案ができるようになると考えています。

 そのほか、文字コードはUnicodeになっており、国際化も容易に行えるようになっています。このことで、ようやく本格的な海外展開が現実的になると考えています。Share360という製品が海外向けにありましたが、これは開発ラインも別でしたので、開発面での負担が大きいものでした。今後はすべての製品をCyDE2のフレームワーク上で開発していくので、ゆくゆくはグローバルに同時リリースできる道も開けています。

ITmedia MySQLやPHPのノウハウが十分に蓄積していないであろうことを考えると、製品のクオリティが気になりますが、そのあたりはどうでしょう?

青野 厳しいご指摘ですね(笑い)。確かに、6月30日にリリースされた段階では、完全なチューニングには至っていないかもしれません。データベースの扱いにまだ慣れていない部分があるので、速度面ではチューニングの余地が残っていると考えています。6月30日のリリース後は、完成度の向上に向けてリソースを割く計画です。とはいえ、Linuxで動作させる場合では、ガルーン2のほうが速度が速いです。

ITmedia 従来のユーザーの乗り換えも出てきそうですが、インストールなどが面倒になっているのではないですか?

青野 これがポイントの1つでもあるのですが、ガルーン2のほうが、従来のものよりインストールが簡単です。従来のガルーンはスケールしにくいものを無理矢理スケールさせるような構造となっていますので、インストールも多段階に行われているなど、部分的に複雑な個所がありました。もしかすると、サイボウズが一番魂込めて作っているのはインストーラかもしれません(笑い)。MySQLもPHPも含めて[次へ]ボタンを押しているだけでインストールできてしまいます。

 また、従来のユーザーが乗り換えを容易に行えるよう、移行ツールも開発中です。残念ながらガルーン2のリリースと同時ではありませんが、数カ月以内にこちらもリリース予定です。

ガルーン2は「国内グループウェア市場の完結編」

ITmedia CyDE2をオープンソース化するといったことはないでしょうか。

青野 その可能性は否定しません。計画はありませんが(笑い)。ただし、サイボウズが向かっている方向は、オープンソースのほうに近づいていると感じています。プロプライエタリからオープンに切り替わるターニングポイントとなる製品が「サイボウズ ガルーン2」であると考えています。

 今回ようやく発表するに至りましたので、これからは積極的にPHPやMySQLの普及に協力していきたいと思います。それらの普及が進めば、サイボウズプラットフォームの普及にも弾みがつくでしょう。

ITmedia オープンソースを採用したことで、何か懸念していることは?

青野 今回の選択で、わたしたちはオープンソースとともに歩むことになり、その浮沈に非常に依存することになりました。例えばPHP4からPHP5に変われば、その変化に追従していく必要があります。そうした依存環境になったことはわたしにとっては懸念材料ではありますね。

 そうした懸念への対応として、やはり優秀な人材を社内に入れる必要がありますね。優秀なオープンソースの開発者すべてうちに来ていただきたいくらいです(笑い)。

ITmedia 今後の野望などがあれば聞かせてください。

青野 わたしたちの思いとしては「世界に通用するソフトウェアベンダー」になりたいのです。そこで、グループウェアにしがみつくのではなく、別のアプローチで世界標準を取るような動きが必要なのです。「世界を取らずして利益を出していて何がうれしいんや」ということですね。

 ですので、今回のガルーン2で、日本のグループウェア市場を完結させたいという思いはあります。これまで中堅・中小企業の市場ではサイボウズは強かったのですが、中堅より上では苦戦していました。ガルーン2の投入で、この状態を一気に変えるとともに、日本のグループウェア市場を完結させ、海外を見据える、というのが今後の計画です。

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