OpenDocumentフォーマットのOASIS標準化は、OSSのオフィススイートとして大きなステップとなった。2007年問題を前に、OpenOffice.orgは企業のPCランニングコストを見直すきっかけとなるかもしれない。2.0登場を前にコミュニティーはますます活性化している。
気持ちのよい気候になって、外に出かけるのが楽しくてなってきたと思っていた筆者ですが、もう梅雨になってしまいました。それにもめげず、今月もOpenOffice.orgを取り巻くコミュニティーニュースを振り返ってみましょう。OpenDocumentフォーマットに始まり、フリークリップアートのフォーマット問題、2.0リリースに向けての最終段階の進捗が報告されています。
これまで何度もOpenDocumentフォーマットについて紹介してきましたが、XMLを応用したe-ビジネス標準を策定する標準化団体OASIS(関連リンク)が、ついにこれをOASIS標準として採択しました(関連記事、プレスリリース関連リンク、関連リンク)。このOpenDocumentフォーマットは、オフィススィートのデータ形式を定義したもので、OpenOffice.org 2.0のほかKOffice1.4でも採用されています。また、IBMとSun Microsystemsが支持を表明していることでも知られています。
OASISによる標準というと、オープンソース団体が特許ポリシーの改訂に異議を唱えたというニュースを覚えている人もいるでしょう(関連記事)。それでは、OpenDocumentフォーマットは、この特許ポリシーにどのような対応をしているのでしょうか。OASISの特許ポリシーには、いくつかの種類に分かれています。
完全にロイヤリティフリーで提供するものもあれば、今回問題になったように、ロイヤリティーを妥当かつ被差別的に徴収可能なポリシーもあります。OASIS OpenDocumentテクニカルコミッティの議長である米Sun MicrosystemsのMichael Brauer氏は、「Sunは、このOpenOffice.org XMLファイルフォーマット仕様をロイヤリティフリーで提供している」と明言しています(関連リンク)。また、OpenOffice.org自体もOASISの特許ポリシーの改訂に異議を唱える声明を発表しています(関連リンク)。
なお、OASISの活動については、日本語Webサイトで情報を得ることができます(関連リンク)。
オープンソースで提供されるOpenOffice.orgには、クリップアートやテンプレートがあまり付属していないという課題があります。
クリップアートは、オフィススィートで文書やプレゼンテーションを作成するときに大きな威力を発揮します。また、多くの商用オフィススィートでは、これらの素材データの充実が大きな魅力になっています。一方、OpenOffice.org自体は、プログラムの開発プロジェクトであるため、このようなデータは、ディストリビュータやほかのプロジェクトに頼っているのが実情です。
先日、フリーのクリップアートを提供するOpen Clip Art Libraryプロジェクトが(関連リンク)、クリップアート集バージョン0.14をリリースしました。このプロジェクトは、オープンソースのドローツールであるInkspace(関連リンク)関連としてスタートしたものです。そのクリップアートは、パブリックドメインとして、主にベクターグラフィックのSVGファイルフォーマットで提供されます。また、最新バージョン0.14には、3400のクリップアートが含まれているのです。SVG(Scalable Vector Graphics)フォーマットは、ベクターグラフィックのためにXMLを応用したファイル形式であり、W3Cにより標準化されています。
ただし、OpenOffice.orgにとっては困った問題があります。それは、OpenOffice.org自体でSVGフォーマットファイルを直接読み込めないのです。
SVGフォーマットは、アニメーションや画像処理を含む多くの機能を持っていますが、OpenOffice.org側ではそのすべての機能に対応できないため、現在SVGファイルのインポートはサポートされていないのです。そのため、現在ふたつの方式が検討されています(関連リンク)。ひとつは、XSLTを利用してSVGの一部をDrawに取り込むもの(関連リンク)。そのために、テスト用のXSLTファイルが公開されており、バージョン2.0のXMLフィルタ機能でSVGファイルを読み込めるようになります。もうひとつのアプローチは、ビットマップファイルを貼り付けた時のように、単にSVGファイルを埋め込んで表示するというものです(関連リンク)。最近では、Issue2497の代わりに提案されました。
クリップアートをDrawで編集することはできませんが、WriterやCalc、Impressで使う場合には、これで十分かもしれません。また、SVGの表示には、サードパーティのレンダリングエンジンを使うことで対応することができます。どのような対応になるかは、まだ最終的なものが分かりませんが、技術力のある人が作業に参加すれば、一気に進展することも考えられます。なお、自由に使えるようクリップアートや写真/イラストなどを提供するプロジェクトは、コンピュータに長けている必要はありません。腕に覚えのある人は、ぜひ検討してほしいです。
OpenOffice.org用ファイルビューアーを開発するOOo Viewプロジェクトがスタートし、Javaのソースコードが公開されました(関連リンク)。このツールは、フィリピン大学のコンピュータサイエンス学部の学生らにより開発されたものです。当初は、バージョン1.0のファイルに対応していましたが、最新バージョンではOpenDoucmentファイルにも対応しています。
さてさて、バージョン2.0のベータ版がリリースされてから3カ月が経ちました。期待の正式リリースは、4〜6月ごろと予想していましたが、実際のところどうなっているのでしょうか。
Release Engineeringチームの責任者であるMartin Hollmichel氏は、Release向けMLに、2.0のリリース予定について投稿しました。
現在、ShowStoperと呼ばれる大きな不具合は見つかっていませんが、2.0に向けて直すことになっている不具合情報や、まだ優先順位が決まっていない不具合情報が多数残っています。そこで、6月20日に向けて、リリース候補(2.0RC)を出すか(そして、どの不具合を先送りにするか)を見極めるとのことです。
すでに日本語版のローカライズ状況をテストするTCMテストは終了しています。また、この段階で新しい機能が付け加えられることはありません。うまく事が運べば、6月末に2.0RCが公開されて、そこで致命的な問題がなければ正式リリースになるでしょう。
今年も、OpenOffice.orgの開発者やビジネス利用者・ユーザーらが一同に介するOpenOffice.org Conference(OOoCon2005)が開催されることになりました(関連リンク)。
2004年の会議も大いに盛り上がりましたが(関連リンク)、OOoCon 2005は9月29〜30日にスロベニアのコーペル(Koper:別名 Capodistria)で開催されます(関連リンク)。OOoConには、開発者やディストリビューター、利用者、企業、政府機関などが世界中から集います。
このカンファレンスでは、待ちに待ったバージョン2.0がリリースされることもあり、大いに盛り上がるでしょう。
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