特集
» 2005年07月27日 21時49分 公開

ドイツポストのSOA導入のカギは?

Deutsche Postは2007年の完全民営化に向けてグローバルなロジスティック企業を目指し、SOAによるシステムの再統合を図った。物流のDHLを傘下に置く大企業はSOAに何を求めたのか。

[怒賀新也,ITmedia]

 ドイツにおける中心的な物流企業であるDeutsche Postは、2007年の完全民営化に向けてグローバルなロジスティック企業を目指す。郵便事業だけでなく、日本でも馴染み深い物流のDHL、金融サービスを展開するDANZASなども買収し、傘下においた。グループ全体の売上高は年間で400億ユーロを超え、従業員は35万人以上を数える。

 同グループでは、さらなるビジネス価値を求めるために、業務プロセスの改善、グループ企業間で持つ資産の統合、グローバルにビジネスを展開することにより24時間止まらないビジネスの展開を目指している。

Deutsche Postへの導入について話す独アイオナテクノロジーズのローランド・トリッシュ氏

 その大きな目標を達成するための基盤になるのがITだ。しかし、同社の従来のIT環境は非常に複雑な状況にあり、それをカバーし、競争力のあるビジネスを展開するための基盤となる情報システムの構築に着手した。

複雑過ぎたIT環境

 だが、同社のIT環境は、システム変更にかかるコストも大きく、また、データも断片化して存在しているために責任の所在が曖昧だった。また、アプリケーションの機能も重複し、絡み合っていたため、IT投資の多くを既存システムの連携に費やす状況だったとしている。結果として、データ統合のための手続きなども複雑で、部分的にしか定義されていなかったため、「島」である各部門の狭い領域にシステムを最適化しようとしていたり、IT戦略にビジネス的な視点が欠けていたりなど、さまざまな問題を抱えていた。

 そこで、ITでの解決策として行き着いたのがSOA(サービス指向アーキテクチャ)によるシステム導入だ。最大の目的はビジネスプロセスの可視化だった。

 SOA化のための実際の取り組みとして、ビジネスとITの間にあるギャップを埋めるために、既存のアプリケーション環境にSOP(Service Oriented Platform)と呼ばれるレイヤーを挟んだ。それによって、複雑なシステムを抽象化し、SOP上で、実際のビジネスプロセスを構築するという手法でシステムの再設計を図ることになったという。

 具体的には、IONAが提供するいわゆるESB(エンタープライズサービスバス)製品「Atrix」が、疎結合な情報システムを構築する上での要として導入されることになる。各システム間はESBを介して連携することで、疎結合な構成を保つことになる。これにより、システム全体の中心部分にボトルネックが発生することを防ぐように設計した。これは、「1カ所ボトルネックがあると全体の拡張性が妨げられてしまう」という懸念に対処したものだとしている。

 このように、Deutsche Postは複雑化する自社のシステムをSOA化することにより、組織間の業務プロセスを改善し、コスト削減に成功したという。また、社内の資産を統合したことにより、顧客の要望にワンストップで応えることができるようになった。一方で、サービス提供地域をグローバル化したことによって、24時間365日のサービス提供が可能になったとしている。

 導入事例について話す独アイオナテクノロジーズのローランド・トリッシュ氏は、Deutsche PostのSOA化で得たこととして、「あくてまでもビジネスの観点から、論理的にアーキテクチャを構築すること」を挙げる。また、本当の意味でのチャレンジは、テクノロジーではなく、ビジネスのあり方を理解した上での統合であることも強調している。

 一方で、テクノロジーについては、「できる限り標準技術を利用し、ベンダーから独立した形で行うこと」を重視することを提言した。日本ではまだまだ本格導入が進んでいないSOAだが、欧米ではすでに事例も多く、Deutsche Postはその内でも最大級のプロジェクトと言っていい。

最新版となるAtrix 3.0

 Atrixは、SOAでシステムを構築しようとする場合に必要なインフラ機能を提供するもの。最新版のAtrix 3.0では、ESBとしてメインフレームの稼働をサポートした。PL/1やCOBOL、CICSなどのメインフレーム環境においてもネイティブに稼働する。また、SOA環境の開発を支援するために、インタフェース言語であるWSDLから自動的にCOBOLやPL/1のコードを生成する機能をも追加されている。

Atrix 3.0について話す米IONA Technologyのエリック・ニューカマーCTO。

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