株式市場への個人の参加が加速する中で、インターネット証券によるシステム対応にも注目が集まる。ネットビジネスを成功させる上でカギを握るとも言われるコールセンター業務ではIP化がキーワードになる。
インターネット証券最大手のイートレード証券が7月に、自社のコンタクトセンターをIP電話環境へと移行させ、システムをカットオーバーさせた。7月現在で口座数は71万1000を数え、売買代金でも個人投資家市場全体の25%を占めている。また、法人向け市場でも、野村證券を抜いてトップになり、ここ数年のインターネット利用の拡大を象徴する企業の1つだ。イートレードにとってのコールセンターの位置づけはどんなものなのか。また、IP化に何を期待しているのか、話を聞いた。
同社のビジネスは、ネット取引環境の提供をメインにしながら、それを補完する位置づけでコンタクトセンターが運用されている。だが、多くのユーザーにとって、Web画面の見方や証券に関する法律知識の説明、または、クレームも含めて、相談する窓口は必須の存在になる。その意味で、対面販売を行わないインターネット証券にとって、コンタクトセンターが唯一顧客の生の声を拾う場となっている。
社長室次長の出井直樹氏は、「口で説明しなくては分からないこともあるため、われわれのビジネスでコンタクトセンターは最重要のインフラです」と話している。
イートレード証券では、六本木の本社と熊谷の2カ所でコンタクトセンターを運用している。そして、1996年4月に導入したPBXのサポート期間が切れることをきっかけに、システムの刷新を検討することになった。そして、2004年4月に六本木のセンターのIP化に着手し、4カ月後の8月に稼働を開始した。
六本木で問題がなければ熊谷に横展開する方針を立て、一定期間の運用後、熊谷への実装が本決まりになった。
この間にも、個人による株式市場への参加がブームになったこともあり、ユーザー数は着実に拡大。コンタクトセンターの座席数の増加を図る必要も出てきていた。そこで、イートレードは、オフィスへのIP電話の導入を手がけるソフトバンク・テクノロジーに、コンサルティング、設計、開発、導入、稼動までを依頼した。そして、Cisco Systemsのコンタクトセンター向け製品「Cisco IP Contact Center Enterprise Edition」(IPCC)の導入を決めた。
イートレード証券のコールセンターでは、顧客からの電話を「注文系」と「問い合わせ系」別々のグループに分けて対応している。この方式では、両業務に対応するスキルを持つオペレータが、どちらか一方しか担当できないといった欠点があった。もちろん、電話をかけてきた顧客を待たせる原因になるなど、サービスの観点からも問題になっていたという。
その状況で、熊谷のセンターを含めて、6月に問い合わせ系、7月に注文系がカットオーバー。IPCCの導入により、各オペレータのスキルに合わせて、それぞれの要件ごとに電話を着信させるような仕組みを構築した。そのため、迅速で適切な応答が可能になり、顧客サービスを向上できるようになったという。
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