「日本版SOX法は7カ月以内に対応開始を」、オラクルが強調(2/2 ページ)

» 2005年08月27日 01時28分 公開
[垣内郁栄,@IT]
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 米国での事例を見ると最もコストがかかるのは、内部統制の基本と位置付けられる文書化のフェーズ。文書化とは、企業がある決定を行ったり、財務諸表のある数値を決定する際に、その決定を行うまでの社内外の手順を文書化、また実際のプロセス処理結果を文書として残すことを意味する。この文書を基に経営者、会計士が内部統制の評価と監査を実行する。

川腰氏 日本オラクルのアプリケーション事業推進本部 プロダクトオペレーションズ FINグループ シニアソリューションマネジャー 川腰晃夫氏

 川腰氏は「業務処理プロセスを流す中でのリスクの洗い出しも必要だ。例えば受注から入金までの貸し倒れ、売り上げの架空計上などプロセスに内在するリスクがある。そのリスクを防止、キャッチアップするための統制の仕組みも考えないといけない」と説明する。

 また、文書化作業は日本版SOX法対応の初年度だけ行う作業ではない。業務処理プロセスの変更などをその都度、反映させないといけないからだ。そのため「米国の調査では初年度と同じくらいのコストが次年度以降もかかっている」。

 米国企業の場合は、文書化に平均5億円かかったともいわれる。「米国ではSOX法対応の予算のうち、文書化などのサービス、コンサルティングに向けられた予算が全体の8割。ITシステムへの振り分けは残りの2割だった」(川腰氏)

 ただ、日本版SOX法への対応を後ろ向きにとらえるべきではないというのがオラクルの考えだ。文書化することで、業務処理プロセスの中から無駄なプロセスを見つけることができ、「究極の目的である業務の効率性を追求できる」(桜本氏)からだ。

 オラクルは、日本版SOX法ではERPの導入がポイントになると見ている。オラクルはERPパッケージ「Oracle E-Business Suite」(EBS)のモジュールとして、内部統制を文書化、テストして順守の進行状況をモニターできる「Internal Controls Manager」(ICM)を2004年10月に国内でリリースした。

 だが、「日本版SOX法の草案は全体統制、IT統制が織り込まれていたので、“内部統制を支える情報システムをオラクルが提供する”というトーンにオラクル社内はなっている」(桜本氏)。ICMだけでなく、EBS全体の内部統制機能を訴求することを目指す。

 具体的には業務処理プロセスの変更を社内外の関係部署に通達して、内部統制の成熟度を上げるeラーニングシステムや、監査記録を管理する「Oracle Collaboration Suite」などを、求められる統制レベルに合わせて組み合わせていく考えだ。内部統制対応を前向きにとらえる企業のために、「Enterprise Planning and Budgeting」「Balanced Scorecard」「Daily Business Intelligence」など経営支援ツールも組み合わせていく。

 桜本氏は日本企業の日本版SOX法への取り組みについて「金融や公益企業の鉄道、電力は取り組みが早いだろう」と説明した。また、米国SOX法に適応するため作業を進めた日本のグローバル企業では「第1段階は手作業で対応した企業が多かった」といい、川腰氏は「効率化のためにはITの活用が重要だ」と訴えた。

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