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» 2005年09月22日 19時05分 公開

製造業の直需商社がインターネットVPNに巡り会うまで

国内の製造業が危機にひんしていると言われるようになって久しいが、国内トップクラスの工作機械専門商社として成長を続ける三立興産ではbit-driveの導入によって新しいビジネススタイルを持ち込もうとしている。

[西尾泰三,ITmedia]
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 国内の製造業が危機にひんしていると言われるようになって久しい。高度成長の時代には大きな成果を生み出してきた日本型の生産管理手法は、生産コストの低い海外生産拠点の台頭などの理由から大幅な軌道修正を余儀なくされている。

 そうした状況において、現在の製造業ではコンピュータとネットワークを使ったFA/CIMシステムが浸透し、事務処理においても大幅な省人化とともに品質やサービスの向上がされつつある。

 こうした問題は日本の自動車産業とともに成長し、現在では国内トップクラスの工作機械専門商社として成長を続ける三立興産にとっても看過できないものである。マシニングならマシニング、旋盤なら旋盤を単体で納品していればよかったような時代から、カスタマイズなどを必要とせず、すぐに利用可能なシステム、つまり「ターンキー・ソリューション」を提供することが求められてきたのである。そのために今ある情報環境をより活用する必要が生じてきた。

「インターネットの通信はあまり信用していなかった」

小島氏

 三立興産の情報通信部EDPルームで部長を務める小島稔氏は悩んでいた。情報環境を整備すべく、これまで、受注発注のほか、仕入れや売り上げ、さらには売り掛けや買い掛けといった基幹業務のデータをやりとりするために全国14個所、後に海外3拠点も含めてネットワークでつないだ。なお、基幹業務のシステムについては、当初はIBMのS/38を利用していたが、その後AS/400にリプレイス、バージョンアップを重ねながら今日へと至っている。

 20年前は9600bpsの速度で専用線を引くと150万円近いコストとなった。その後コストダウンを図るため、時代時代で代替となるインフラを積極的に導入してきた。過去にはISDNのDチャンネルパケット、DDX-P(Digital Data eXchange Packet)といったサービスも導入した。

 コスト面では若干下がったものの、速度面では長らく9600bpsを強いられていた。やりとりされるデータこそサイズが小さいものだったとはいえ、それでもEnterキーを押してからの反応はやはりストレスのたまるものだった。1996年には、全社員へ1人1台パソコンを配布し専用線からフレームリレーへの切り替えを行い通信コスト削減に取り組んだ。しかし、通信インフラに対してかけられるコストはすでに限界に達しており、回線を束ねて通信速度を上げるなどの策は取れなかったのである。その後、2003年にはIP-VPN網や広域LAN網へと移行し、若干の速度向上が図られたが時代はブロードバンド時代へと進みつつあった。コストを抑えてブロードバンド化する手法として、その代表的な方法がインターネットVPNである。小島氏はこの時点でインターネットVPNを採用しなかった。その理由を「インターネットの通信をあまり信用していなかった」としている。足回りにはNTTが提供する専用線サービス「Digital Access」を選択していたこともあり、速度面での期待はできないとはいえ、ネットワークがしっかりと保証されているような法人向けの手堅いサービスを選ぶことがこの時点では賢明だと考えたのだという。

bit-drive導入以前のネットワーク体系図

 bit-driveとの出会いは意外な形だった。2004年も師走が迫ってきたころ、社員証をシステムと連携させるような動きが出てきた。その過程においてインターネットなどで情報収集をしていた同氏は、SONYが提供しているICカード関連のソリューションを見つけ、その革新性に衝撃を受けた。加えて、2005年4月から施行される個人情報保護法への対応に頭を悩ませていた同氏は、「FeliCa」を利用し個人認証までサポートする”CRYP”を使ったソリューションを目にすることになる。「これは自社のビジネスに大きな変化をもたらす。きっとユーザーに受け入れられるだろう」。ここで同氏はひとつの大きな決断をする。

 「今後CRYPのサービスを利用するのなら、インフラ部分でも任せられる部分はbit-driveに任せてみよう」(小島氏)

 しかし同時に大きな不安も抱いた。上司への説得である。往々にして、経営層に技術的な観点からインフラの乗り換えを提言してもなかなか理解されない。だが、小島氏の熱意には追い風が吹いていた。2004年の9月から11月にかけて、同社ではホストコンピュータのほか、各個人に貸し出しているPCの入れ替えを行った。ちょうど2000年問題のころにリースしたものがその契約期間が切れるタイミングだったのだ。同氏はこの事実を基に「最新のスーパーカー(PC)を持っているのに、道路(ネットワーク)は舗装されていない。これでは宝の持ち腐れではないか」。加えてコストを大幅に削減できモバイル環境も整備できることで、スピード時代に不可欠なインフラを手に入れることが可能となった。この提案に経営陣もただうなずくしかなかった。

 こうしてインフラを刷新する一大プロジェクトが立ち上がった。2004年も終わろうとしていたころである。工事費が無料になるというキャンペーン期間が年末までだったこともあり、小島氏は年内に承認が下りたことに胸をなで下ろした。その横には、それまで小島氏とともにbit-driveの選定を続けてきた情報通信部長の加藤斉氏(2005年7月に取締役社長に就任)が満足げな表情を浮かべていた。

 決まってしまえばスムーズに進んだ。年明けからはソニーの技術者とネットワークのデザインで簡単な打ち合わせを行った。別段特殊な要望もなかったため、1月にスタートしたプロジェクトは3月25日にテスト稼働、4月1日から本格稼働している。

bit-drive導入後のネットワーク概念図
bit-drive導入後のネットワーク体系図

 「本社側から各拠点に対してリモート接続して端末を操作することがあるが、まるで同じ建物内にあるマシンのような感覚で操作できた。かつて、Enterキーを押して反応を待っていたころと比べると目の覚める思いだった」(小島氏)

 同社では小島氏と神谷氏の計2名で各拠点を含むシステム周りを担当している。何か変更を各拠点に対して反映させたりトラブル対応を行う際、IT資産管理ツールであるNetInsightを利用してリモートコントロールしているが、こうしたオペレーションの速度は拠点数に比例して大きくなる。その比例曲線の傾きを大きく下げたことは管理面での負担を大きく軽減した。インターネットVPNで不安に思っていた速度面も安定しているほか、AS/400、iSeriesの端末エミュレータである5250エミュレータが、安定して使えている点についても高く評価している。

真に重要なのは従業員へのフォロー

 スムーズに稼働まで進んだとはいえ、少なからず問題も生じていた。例えば、Felicaについて、複数のアプリケーションからのアクセスは排他制御がかかる問題だ。より具体的には、CRYPでリモートアクセスとPCのロックを同時に実現しようとするとうまく機能しないのである。これはbit-driveの担当者から話を聞いてはいたため、個別対応という形で対応する予定だったが、PCのロックを行うソフトウェアの選定が遅れたこともあり、結局アプリケーション側の対応がなされたのは本格稼働のあとだったという。ただ、CRYPでリモートアクセスを利用しているユーザーは数人だったこともあり、それほど深刻な問題にならなかった。「今回のプロジェクトで1つ要望を出すとすれば、PCロックの機能もCRYPの1サービスとして提供してほしい。そうすればPCロックのソフトウェアを別途購入する必要もなく、かつそうしたアプリケーションの競合などもなくなるのではないだろうか」と神谷氏は話す。

 加えて、こうした新しいサービスをどのように末端の従業員まで普及させるかについては頭を悩ませるという。高齢者も多い環境で、かつ常にITと向き合っているわけでもない従業員に対してのフォローが欠かせないと神谷氏は指摘する。

 「意外に思われるかもしれませんが、現場の人間にはPowerPointはおろか、Microsoftという単語ですら認知されていないケースも珍しくないのが現実です。CRYPなどの先進的なサービスを導入する際には、こうした人たちに対して分かりやすいドキュメントなどを十分すぎるほど提供していかなければ、使われないシステムとなることは明白です」(神谷氏)

 こうした問題もあるとはいえ、bit-driveのサービスレベルの高さに満足した小島氏は、勤怠管理の部分もbit-driveが提供するInternet Time Recorder(ITR)で置き換えることを考えているという。また、テレビ会議のシステムなども検討していると話し、従来の専用線の帯域ではなし得なかった新しいビジネススタイルを持ち込もうとしている。

 産業界とbit-drive、一見交わるはずのなかった2つが力を合わせ、真の価値への扉を開けていこうとしている。

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