復活したターボリナックスが勢力を拡大

ターボリナックスは、1、2年のうちにベトナムでのオフィス開設を計画するなど、日本と中国にとどまらないアジア市場での成功に目を向けつつある。

» 2005年12月14日 09時00分 公開
[Mike-Newlands,japan.linux.com]

 大阪証券取引所の上場企業として復活し、躍進中のターボリナックスは、日本と中国にとどまらないアジア市場での成功に目を向けつつある。著しく成長した日本のポータル運営業者ライブドアの関連子会社であるターボリナックスは、この先2年以内に近隣諸国への輸出による収益の比率を倍増させて20%にする計画を発表した。ターボリナックスによる最新の投機活動は、比較的開拓が進んでいないベトナム市場に向けられている。同社は、日本の経済産業省との契約の下でベトナムの市場調査を開始している。

 日本経済新聞の記事によると、日本、中国、韓国の間で最近結ばれた、Linuxをはじめとするオープンソースソフトウェアの利用を促進する協定の一環として、日本政府は、ベトナムに対するオープンソースソフトウェア普及のための公的な開発支援を検討している。ターボリナックスは、1、2年のうちにベトナムでのオフィス開設を計画しており、現地でビジネスの機会を探索すると述べている。

 ターボリナックスはまた、急成長中で潜在的規模の大きなインド市場での取り組みを強化しており、過去2年にわたってインドでのソフトウェア販売を代理店経由で進めている。同社は、今後数カ月以内にインドの関連子会社を「ある大都市で」設立する。その時価資本総額は1億円(83.6万ドル)、活動資金は2億円(167万米ドル)であり、これらには、2005年9月の新規株式公開で取得した資金が充てられる。インドにおけるターボリナックスの社員は、現地の従業員が25人、本社から派遣する管理職および開発者が数人になる。

 中国市場における開発と販売で中国政府機関との合弁事業を進めるターボリナックスは、中国のLinuxサーバ市場で成功を収め、市場調査会社のIDCによると62%のシェアを持つという。この数字は、権威ある中国科学院(Chinese Academy of Sciences)からスピンオフしたRed Flag Softwareのシェア29.6%の2倍以上となる。中国科学院といえば、最近IBMのPC事業を買収したコンピュータ巨大企業Lenovoの母体でもある。ターボリナックスは、中国のデスクトップ用Linux OSの市場でも25%のシェアを持つ。

 中国市場でのLinuxのシェアはまだ約10%に過ぎず、WindowsとUnixの優勢が続いている。中国の市場調査会社CCID Consultingによると、2004年の中国でのLinux関連の売り上げは前年比44.8%増の9644万元(1160万ドル)であった。その85%をサーバアプリケーション向けのLinuxが占めていた。2005年の中国でのLinux関連の売り上げ総額は、同じような成長率で伸びて1億4300万元(1770万ドル)になるとCCIDは予測している。

 しかし、中国企業および政府機関によるLinuxサーバソフトウェアの利用が増えるほど、日本および韓国との3国間の協定によってLinuxの採用が加速される可能性がある。市場が成長すると、Red HatやNovellのような海外ベンダーの進出が増えるだろうが、ターボリナックスは、製品開発力のおかげで、過去4年間保ってきた首位を守る好位置を確保している。欧米のサプライヤーにないターボリナックスの大きな強みは、漢字を処理するソフトウェア開発の能力であり、コンピュータ内部で中国の漢字は、日本の漢字と同じように表現される。

 日本では、規模は小さいが成長を続けているLinux市場(IDCによると、Linuxは日本のサーバ市場全体の11%を占めている)において、ターボリナックスはレッドハットや日本オラクルの関連子会社ミラクル・リナックス、それに最近ではSUSEを擁するノベルと激しい闘いを繰り広げている。

 2004年末の12月、ターボリナックスは売り上げを6億6400万円(550万ドル)と発表し、そのうち70%はソフトウェア、残り30%は技術サポートとほかのサービスによるものであった。同社は、今年の売り上げを75%増の11億6000万円(970万ドル)と見込んでおり、同社史上初の2期連続黒字となる利益は1億7000万円(140万ドル)と予想している。

 ターボリナックスの矢野広一社長は、売り上げの90%を占める日本国内において、同社が国内Linux市場の年間成長率45%よりも大きな割合で伸びると予測している。

 1995年に米国製ソフトウェアを日本で販売するために設立されたターボリナックスは、1997年に事業の中心をLinuxへとシフトさせ、2000年には本社を米国に移従、2002年に破産保護を申請した。その日本法人は、国内のソフトウェア開発会社に取得され、昨年ライブドアに売却された。

 それ以来、過去を振り返ることなく成長を続けた。ターボリナックスは、9月15日の大阪証券取引所のヘラクレス上場時には9億2000万円(770万ドル)の資金を集め、ライブドアは同社の株を売ることで7億9500万円(660万ドル)もの投資回収に成功した。

 ターボリナックスは、安価なオペレーティングシステムを必要とするローエンドなPCサーバをターゲットにしてサーバ市場で競争を繰り広げている。日本で販売されている商用のLinux OSの中では最も安い4万円(336ドル)未満という価格設定により、同社OSの売り上げ見通しは明るい。「PCサーバでは、大きな売り上げが見込める」と矢野氏は述べている。

 ターボリナックスは、デスクトップ向け市場においてMicrosoft OfficeプログラムをサポートするOSを発売したばかりである(関連記事参照)。同社はこのOSによって、日本のPC用OSの市場をほぼ100%掌握しているWindowsの勢いをそぐことを期待している。このソフトウェアは、同社のTurbolinux FUJIが搭載されたPCにバンドルが予定されている。

 この製品の鍵になっているのは、Linux上でOfficeを実行可能にした、フィリピンの企業SpecOps Labsが開発したコンポーネントである。Turbolinux Personalのリテール版は、配布業者のソースネクストから1980円(16.60ドル)、Windows OSの価格の約15%で販売されている(関連記事参照)。ソースネクストは、初年度売り上げ目標を100万本とし、Linux互換のソフトウェア製品50種類の導入を目指している。

マイケル・ニューランド氏はフリーランスのジャーナリストで、1982年からアジア太平洋地域の情報通信技術に関する報道に携わっている。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ